石破首相は「日本のリズ・トラス」になるのか 政権運営に不安の声
「守る」ばかりで改革の意気込みに乏しい石破政権
こうした状況に最も落胆しているのは岸田文雄前首相かもしれない。岸田は8月14日、米国のジョー・バイデン大統領のように再選を断念した。バイデンと同じように、党が清新な顔を選んで国を前進させられるようみずから身を引く決断をしたのだ。 政治評論家らの間では、先月時点で、その「清新な顔」は小泉進次郎元環境相か高市早苗経済安全保障担当相(当時)になるのではないかと予想されていた。43歳、政治家一族の子孫である小泉が総裁選で当選すれば世代交代の象徴になる。63歳の高市が勝てば日本初の女性首相が誕生していた。 その2人を退けての石破の勝利は日本の政界にショックを与えた。それはひとつには、石破が長い間、彼自身の言葉を借りれば「群れない」(編集注:ワシやタカのような強い鳥は群れないという意味の「鷲鳥不群(しちょうふぐん)」が座右の銘とされる)人物で、政界に仲間が非常に少ないからだった。しかし現在、政界関係者やその他を動揺させているのは、石破政権の運営が発足直後から不安定なことだ。 混乱は市場にも見てとれる。石破の優先順位がころころ変わるなか、投資家は「イシバノミクス」とはどんなものなのだろうかと気をもんでいる。現時点で、はたして本人にもそれはわかっているのだろうか。 だいたいにおいて石破の経済政策は、人口およそ1億2500万人の日本でほとんど誰も熱狂させなかった「キシダノミクス」の継続のように見える。中国があれこれの課題を抱えながらも経済や金融のパフォーマンスを高めようとしているなか、この継続は日本が最も必要としていないものだ。 岸田政権(2021~24年)の経済政策も以前からの「継続」ばかりだった。前任の菅義偉政権(2020~21)もそうだった。その前の安倍晋三首相は一部では思い切った改革者だったと見なされているものの、日本の成長モデルの更新という点では口先ばかりで実行に乏しかった。 日本経済に必要なのは、劇的な変化を起こし、煩雑な行政手続きを減らし、労働市場を改革し、女性に力を与え、人口の高齢化・縮小による影響に対処することだ。