いい仕事ってなんだろう?/令和ロマン・高比良くるま
「面白さを言語化できたら、 世の中のお笑いレベルの総量が上がる気がする」
昨年の『M-1グランプリ』の敗者復活戦で見た、令和ロマンの漫才「ドラえもん」は熱かった。MOROHAが歌う主題歌とか、大山のぶ代から水田わさびに声が変わるとか、「わかる!」が攻めてくる感じ。決勝進出ならずも、記憶に残る4分間だった。そんな令和ロマンのYouTubeチャンネルを見ていると、「1回戦対策講座」や「敗者復活戦の攻略法を考えよう」といった考察動画が目立つ。もちろんエンタメではあるけれど、根底にはボケの高比良くるまさんの分析力が生きている。 褒められたのはなぜかを分析する。 「気温とか音響とか、その時々の環境を考えるのが好きなんです。例えば敗者復活戦の会場は野外の六本木ヒルズアリーナで、東京中の風が流れ込む。日が沈むとめちゃくちゃ寒いんです。寒いとお客さんは笑いづらくなるので、出順が遅いときついんですよ。そうなったらどうしようかなと考えて」 12月の吹きさらしは確かにきつい。いくらいいネタができても、お客さんが万全の状態じゃないと笑いは起きないもんなあ。 「あと客席のガンマイクが演者を追いかけてくるのが面白いなと思ったんです。ガンマイクが左右に動くと僕が無茶苦茶してるふうに見えるから、ネタにその笑いが乗っかるんですよ。『M-1』ではそういうボーナスポイントも取りに行ってます。カラオケ採点でしゃくりとかビブラートで点数ひたすら上げるみたいな。実力とかフィジカルな質とか声量とか演技力みたいな面では、俺らは準決勝に行ってる人たちの中でも下のほうだと思うんで、コツコツ足していく」 いやいやそんなこと……と素人は口を挟みたくなるけれど、これは芸人の頂上決戦の話。きっと我々には見えないパンチやキックが山ほどあるし、くるまさんによる自己分析ではそういうことになるらしい。その思考はメモしておくんだろうか。 「書く脳の人じゃないんですよ。発話の脳みその人なので、人に聞かれて喋ったときに思いつくし、筋道が立つんです。文字で書こうとすると矛盾しちゃうというか」