「オクトパストラベラー」シリーズ初のオーケストラコンサートで巡る音楽の旅 – 物語とキャラクターを思い出す演奏と歌声に感無量
休憩をはさんだ後の第二部は、『オクトパストラベラーII』の「風翔ける、戦場」からスタート。疾走感のある楽曲で、ブラスのサウンドからは勇気や決断といった意思が伝わってくる。再び会場の空気をあたためるには、十二分なスタートとなった。続く「華やかなる都会」はスウィングのオシャレな楽曲で、鍵盤打楽器などが作り出す都会的な雰囲気が印象的。また、昼と夜の違いを楽曲で表現する。夜の部分ではトランペットが「ミュート」と呼ばれる音量や音色を変化する機器を付けたり、オーケストラ全体が静寂な空気を作り出したりなど、音楽によって“時間帯”を表していた。 その後の「理を司る者」では客席から見て舞台左が赤、右が青の照明に照らされる。その照明のようにヴァイオリン担当の吉田篤貴とギター担当の塚越廉がソロでぶつかり合う。まるで楽曲中に対決しているかのような2人の演奏に、見ていて心が熱くなってくる。鬼気迫るサウンドの連続に、鳥肌が立ちっぱなしだった。 そんな「理を司る者」とは違う形で心に火を灯してくれたのが「背中を押して」。原曲からヴァイオリンの音色が心地よい一曲だが、生で聞くとその感動は2倍、3倍にも膨れ上がる。曲名の通り、“背中を押して”もらっているような気持ちになり、音楽の魅力をひしひしと感じられた。 MCパートでは、『オクトパストラベラー』『オクトパストラベラーII』のディレクター・宮内継介が登壇する。まずは「最高ですね」と感想を一言。また、「いろいろなジャンルの楽曲があって多彩。珠玉の曲たちを選んでもらえてよかった」と『オクトパストラベラー』の音楽の魅力にも触れた。 続く「旅立ちの唄」「きぼうの唄」では、國土佳音がボーカルとして参加する。優しさ、希望などを感じる歌声。そして、それを支える演奏。ボーカリストの衣装も相まって、恐らくあの場にいた多くの人が、ステージ上に「アグネア」の存在を感じていたのではないだろうか。少なくとも、筆者の目には周りを自然と笑顔にさせる踊子の姿が見えていた。 一方で「灯火の守り手」「欲望の道に待ち受ける者」のメドレーでは、國土が黒の衣装を羽織り、青いリボンを付けて颯爽と登場。同じく優しさは残しつつも、悲しみ、神々しさなどを彼女の歌声とオーケストラの演奏から感じて、圧倒されっぱなしだった。 コンサートもいよいよ終盤。「決意」では、メロディがイングリッシュホルンからヴァイオリンへと移り変わっていく。その構成、音色の変化からは、さまざまな過去があっても前に進もうというという、まさに“決意”を感じられた。 続く「王道を求めて」からの「決戦2」も、シームレスにバトルへと突入するあのゲーム体験が蘇ってくる。「王道を求めて」の力強い笛の音色、「決戦2」のバトルの激しさを象徴するかのようなメロディライン、そして「ここが勝負どころ」と言わんばかりのブラスと笛の鳴りが心に突き刺さる。その後の「旅路の果てに立ちはだかる者」では、パーカッションや伴奏の激しさの一方でメロディや笛の音色からはちょっとした哀愁も感じられた。 本編を締めくくる「魔神の血を継ぐ者」「明日を望まぬ者」メドレーでは、ソプラノ・Yuccaとテノール・村上敏明がボーカルとして参加。緊迫感のあるオーケストラの演奏、そこに凄み・圧を感じる2人のボーカルが加わることで生まれる独特の空気感に息をのむ……というよりも、息をするのを忘れてしまう。気が付いたら演奏が終わっていて、呆然としそうになりながらも、自然と拍手だけはしていた。 アンコールでは、「踊子プリムロゼのテーマ」を演奏。ヴァイオリンとギターのソロは、今度は競い合うというよりかは「共に」「寄り添う」という印象を受ける。2人のソロをオーケストラが際立たせているようにも感じた。 初となるオーケストラコンサートの締めくくりに選ばれたのは、「キャットリンのテーマ」。最後はソリストが全員集合し豪勢な演奏となり、大団円で幕を閉じた。 今回の演奏を通じて、『オクトパストラベラー』の楽曲はソロや主メロディを伴奏が際立たせているように感じた。もしかするとそれは、ゲーム自体がそれぞれのキャラクターの物語を大切にしているからなのかもしれないと感じながら、人生の経験値を得た筆者は音楽を楽しむ旅をいったん終えて、帰路についた。 なお、今回のオーケストラコンサートのためにアレンジされた楽曲を収録したアルバム『OCTOPATH TRAVELER Orchestral Arrangements -To travel is to live-』が現在、発売中。さらに、16ビットのレトロゲーム風サウンドで聞ける『OCTOPATH TRAVELER II 16bit Arrangements』が3月29日(金)にリリースされる。音楽で彼らの、そして自身の旅路を振り返ってみてはいかがだろうか。 ●photo/関口佳代 text/M.TOKU © SQUARE ENIX
M.TOKU
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