『一番強い競馬』をしたのはどの馬なのか?
5月25日に行われた3歳牝馬によるクラシック第2弾・オークスは、手に汗握る大激戦となった。優勝したのは単勝2番人気のヌーヴォレコルト。前走の桜花賞は3着に敗れたが、オークスでは圧倒的1番人気に支持された桜花賞馬ハープスターの猛追を振り切り、リベンジを果たすとともに、待望のG1タイトルを手にした。 ソツのない立ち回りで勝利をつかんだヌーヴォレコルトの走りは完璧だった。レース後に、手綱を取った岩田騎手が「距離は大丈夫だと思っていたし、左回りも得意。正攻法のレースをしました」と振り返ったように、馬の力を信じて、道中は中団馬群の中で折り合いに専念。絶妙のタイミングで早めに抜け出しを図り、ライバルの追撃を封じた騎乗は見事だった。一方で、前半1000メートルの通過が60秒7というスローペースの中、直線大外から猛然と追い込んだハープスターの末脚もさすがだ。「1番強い競馬をしたのはこの馬」という関係者やファンの声も多く、まさに“負けて強し”の内容だった。両馬ともに持ち味を存分に発揮したが、果たして、本当に強いのはどちらなのか? “強さ”の定義は非常に難しい。 ディープインパクト産駒のハープスターは、父譲りの豪脚が武器。息の長い末脚を生かすには、序盤に脚を温存して、直線に勝負をかけるスタイルが合う。そのため、どうしてもコースロスが多く、大味な競馬を強いられるが、なし崩しに脚を使って切れ味が鈍るよりは、メリハリを利かせた方がベターだ。誤解を恐れずに言えば「競馬をしない方がいいタイプ」。正攻法の競馬で真っ向勝負を挑むよりも、スムーズさを追求し、身体能力の高さを生かした方が勝算は高い。 もちろん、ウィークポイントは器用さに欠ける面にある。昨年の阪神ジュベナイルFでは、直線で馬群の中を突いたことが裏目に出て鼻差の2着に敗れた。レース終了後に、松田博資調教師は「納得できない。勢いをつけて外に出していればいいが、中途半端だった」と不満を口にしたという。それ以降、主戦の川田騎手は“大外一気”のスタイルを貫いている。先日のオークスは、左前脚を落鉄しかけていたという不運もあった。むしろその状況で、メンバー最速となる上がり3F33秒6の末脚を放った精神力の強さは評価されるべきだろう。