世界的ピアニスト角野隼斗、初の劇伴 意識した映像との「一定の距離」
世界的ピアニスト角野隼斗と、ちな監督がこのほど、都内で行われた映画『GEMNIBUS vol.1』舞台挨拶に臨んだ。角野隼斗は、オムニバス映画の一篇となる短編アニメ『ファーストライン』(ちな監督)で、音楽制作を担当した。 【動画】角野隼斗×ちな監督の対談のもよう(約15分 トークテーマは“角野隼斗と考える映画音楽について”。本作で初めて劇伴を担当した角野はデモ制作を振り返り「ちな監督とお会いして、細かいイメージを伺っていたので方向性はすごく見い出しやすかったです。アニメーションの中で鳴っている効果音が音楽の一部にもなっているのでそれらが全て一体化しているようなイメージを持ちながら作りました」と説明。 また、初めて角野によるデモを聴いた時についてちな監督は「音楽発注の際に絵コンテを見ていただいたんですが、映画って作品がどういう風にお客さんに届くか(という点で)はすごく音楽が大事だと思っていて、この作品は角野さんのこの音でやっていくんだというワクワク感と覚悟みたいなものが出てきて、絵もより一層このデモに勝ちに行こうという気持ちが沸いてきました」と振り返った。 レコーディング方法について聞かれると角野は「全編グランドピアノをメインで使用しつつ、持参したトイピアノと組み合わせながら作っていきました。ちな監督にも立ち会ってもらいました」。ちな監督は「劇中の音楽効果は実際に角野さんがピアノを弾かれているんですが、それに対してのディレクションを即興的な感じでやり取りさせていただいて。あの瞬間は本当にこの映画を作っているのすごく楽しいなと思いましたね。」と目を輝かせた。 この日は観客からの質問にも答えた。劇中でエフェクトに音が一瞬入らなくなる場面があるがその意図は?という問いにちな監督は「デモをいただいたときに、角野さんが音を入れてこない箇所があったんですが、それは角野さんの演出でもあり。『どこかで無音を活かした演出をしたい』というのを最初にオーダーを出していてそれを組んでもらったものだったのかな」と振り返る。 角野も「主人公が成長していくたびに音が高くなって、盛り上がっているのを演出している。ボスにダメ出しを喰らっているシーンはそのときの状況を無音によって表していました」と補足した。 続いて、アニメーションに音をのせていく際に気を付けていたこと・意識していたことはなにかという質問について角野は「映像に合わせすぎないという視点もあるのかなと思っていて。それは久石譲さんが『君たちはどう生きるか』のインタビューで仰っていたんですけど。『映像と音楽が一体化しすぎると印象が薄まることがある』と書かれていたのをなるほどなと思い、一定の距離を置いていました。音楽が映像には寄り添うんですけど、決して映像を追い越さないように。と思っていました」とこだわりを明かした。 最後の質問は、絵コンテだけで曲を作る際にどういう風にイメージを膨らませたのか、というもの。角野は「最初は割と俯瞰してみていたんですけども、ストーリーはわかるように作っていただいてたので想像が難しいところはそんなになかったです」と天才らしくきっぱり回答した。