岸本ゆめのが語る、等身大のシンガーとして目指すディープな表現力
「自分にしか歌えない歌があるはずだから、一人で歌いたい」
―では、「BLUEMOON BLUES」の反応をどう受け止めていますか。YouTubeのコメント欄を見ると好意的なものが多いですよね。 でも、「岸本ゆめのっぽい」って言ってくださる方と「新たな岸本だな」っていう方と半々なイメージですね。ミュージックビデオの衣装が2種類あって、黒いライダースにちょっと奇抜なデニムを履いてるパターンと、ドレスみたいな白いワンピースを着てるパターンなんですけど、白いワンピースは自分から着たいと言ったもので、イメージをいくつか送った中から似合いそうなものを作っていただきました。私的には、白の、しかもワンピースを自分で選ぶっていうのはちょっと挑戦だったんですよ。グループにいたときは正直、白とかパンツじゃないものは着たくなかったので。 ―へぇ~! グループの中だと私は身長が高くて体格も大きかったので、そういう衣装だと悪目立ちすると思ってたんです。でも、1人になったことで自分が本当に着たいものを着れるようになりました。なので、白は自分的には新しいものではあったんですけど、そこについて触れられてるコメントはあんまりなくて、それはいい意味で馴染んでるっていうことなのかなって。 ―配信がスタートしたばかりの「ユーアーアイ」はどうですか。 これは共感できる部分がすごく多い曲です。ここでも温度を感じやすくて、色とか景色が想像しやすい歌詞をお願いしていたんですけど、この曲はもうそのままというか。めちゃくちゃお気に入りです。 ―やっぱり、温度感が大事なんですね。 これまでできなかったことをしたいっていうのがあって、これまでの楽曲は自分的には空想だったから、これからは現実味のあるものがいいんですよね。 ―温度というか、体温みたいな感じですか。 あ、そうです。体温、実感できるもの、ですね。空気、匂い、音……今もこの部屋で何かの機械の音がずっと鳴ってるじゃないですか。そういう日常に溶け込んでいるものが好きなんですよ。映画もそういう作品が好きなんですよね。超フィクションとかアクション物も好きなんですけど、傍からはどうでもいいように見えるけど、その人にとっては大切な日々を切り取ったような映画もけっこう好きで。 ―それって元々ですか? それともこれまでの反動? 多分、ここ数年……20歳になってからかもしれないですね。派手なものが好きな時期もあったし、夢みたいな話が好きな時期もあったんですけど……これは別に悪い意味じゃなく、当時の反動かなとは思います。 ―「ユーアーアイ」の作詞作曲を手掛けているのはアカシックのボーカル理姫さんとギターの奥脇さんで、とてもアカシックらしい曲に仕上がっています。岸本さんのボーカルも理姫さんのスタイルにちょっと引っ張られていませんか? あはは! ノーマル、ロック、カワイイみたいにいろいろな歌い方を試してみたんですけど、理姫さんの仮歌がよすぎて、かわいいと思ったポイントを歌詞カードにバーっと書いちゃったんですよ。なので、そのせいはちょっとあるかもしれないですね。 ―仮歌込みで好きになっちゃってる部分があったんですね。 そうですねえ~。いいのか悪いのかはわからないですけど、理姫さんのバージョンがかわいすぎて……聴きすぎました(笑)。 ―あはは! あと、これはアイドル時代からディレクターさんからもよく言われていたことなんですけど、私はよくも悪くも器用で、モノマネが得意なタイプなんですよ。声まで似せるわけではないんですけど、歌ってる人の特徴を掴んでその人っぽく歌うのが得意で、そのせいで自分を見失うことがあるんです。 ―そうなんですね。 プライベートで1人カラオケによく行くんですけど、自分の歌っていうよりもそのアーティストっぽく歌うことに慣れてしまっているので、自分の歌の正解がなんなのかあんまりわかってないんです。グループ時代も「この曲はこの人っぽく歌おう」って感じでやってきてしまったので、今も岸本ゆめののオリジナルがどこにあるのかを常に探している状態なんですよね。 ―聴いてる側からすると岸本さんの新しい一面を見たと思えるものでしたけどね。 あ、本当ですか? もちろん、自分の中で一番合ってると思う声で歌ってはいるんですけど、歌い方は完全に引っ張られてますね(笑)。 ―おもしろいなと思ったのが、ピッチを意図的に外しているじゃないですか。そういう表現もできるというのが驚きでした。 ちょっとハズした感じが味になってるアーティストの方はたくさんいるじゃないですか。さっきもお話しましたけど、そういう方の曲をカラオケで歌うときはそういう歌い方をしてきたので、「これも正解なんだな」とは元々は思っていたんです。なので、これまではグループにいる自分には合わないから出してなかっただけで、引き出しとしては元々あったものを今回開けてみた、みたいなところはあるかもしれないですね。 ―ということは、まだ開けていない引き出しはもっとあるわけですね。 あると思います。そういうものをたくさん見せていくことで、広くて深くて熱い表現を手に入れられたらいいなと思います。 ―今後、何を目指していきたいですか。 シンガーソングライターになるつもりはないんですけど、自分でも曲はつくっていきたいです。実際、今もつくっているところなので、それをしっかり形にして出していきたいですね。「自分にしか歌えない歌があるはずだから、一人で歌いたい」ってずっと思ってきたので、私の人生だけで感じられるものや想いを音楽に乗せて発信していきたいなと思っています。 ―ライブの予定があるそうですね。 6月8日に岸本ゆめのとしての初ライブをバンド編成でやらせていただく予定です。 ―おお! 今回の楽曲を聴きながら、ライブで聴くならバンドセットがいいなと思っていたところです。 そうですよね。特に「ユーアーアイ」はライブが想像しやすい曲だと思うし、今録ってる曲もこれまでとは全然タイプが違う曲なので、一辺倒なライブにはならないと思います。 ―今後はやりたいことすべてにトライしていく一方、それをどうやってひとつの作品としてまとめるかというのが課題になっていきそうですね。 たしかにそうですね。この先、どんな曲が増えて、どんなセットリストになっていくかっていう想像はまだできていないんですけど、それはライブをやっていかないと掴めないと思うんですよ。でも、グループでもいろんな曲を歌ってきたので、今ある曲たちを自分の中にしっかり落とし込んで、それを歌う場所をたくさん作っていけたらいいなと思ってます。音源とライブでイメージが全く変わる曲もあると思うんですよ。なので、ただライブで届けるだけじゃなくて、お客さんと空気のキャッチボールをしつつ、自分でも曲を理解していけたらと思ってます。 岸本ゆめの 2000年4月1日生まれ。大阪府出身。2012年11月ハロプロ研修生に加入。2015年4月29日、ハロプロ研修生内新ユニットとして「つばきファクトリー」が結成され、メンバーに選ばれる。インディーズシングル4枚のリリースを経て、2017年2月22日にメジャーデビュー。同年7月に発売した2ndシングル「就活センセーション/笑って/ハナモヨウ」で『第50回日本有線大賞』新人賞、『第59回日本レコード大賞』最優秀新人賞を受賞。2023年11月6日日本武道館で行われた卒業公演をもってつばきファクトリー、およびハロー!プロジェクトを卒業。2024年1月YU-Mエンターテインメントに所属後、準備期間を経て今、進みだす。趣味は筋トレ、ギター。 「イチ、ミマン」 出演:岸本ゆめの 日時:2024年6月8日(土)新宿LOFT 時間:開場 19:00/開演 20:00
Daishi "DA" Ato