<聖光・春に駆ける>’22センバツへの軌跡/下 打撃力向上へ基礎練習 除雪で足腰強化、イメトレも迫真 /福島
「とにかく打てないんだ」。聖光学院の斎藤智也監督(58)は取材のたびに、そう口にした。昨秋の県大会と東北大会のチーム打率は、10試合で2割6分7厘。本塁打は1本しかなかった。 それでも、センバツ出場の切符を手にしたのは、制球が良くキレのある直球で6完投したエース佐山未来(2年)の活躍と、犠打飛26、盗塁13という小技や機動力を駆使し、つなぐ野球に徹した点などが評価されたからだ。粘り強いのが特徴だが、先制を許し、追う展開が多い、というのも事実だ。 一番の課題は打撃だ。東北大会決勝の花巻東(岩手)戦で、それは如実に表れた。2点先制された後の一回2死一、三塁のチャンスを生かせない。二回も1死満塁から内野ゴロで1点返すが、続かない。四回も2死満塁から本塁が踏めない。終わってみれば1―4。残塁9。4年ぶり2回目の優勝を逃し、目標の神宮大会にも出場できなかった。 東北大会終了後、ナインは打撃の基本に立ち返った。ティー打撃やフリー打撃に多くの時間を費やした。 基本となる体づくりのためには何でもした。「雪かきをさせてください」。10センチ以上も雪が積もった年末年始は、伊達市にある学校近くや桑折町の同校グラウンド近くの住民に申し出た。全身運動の除雪で足腰を鍛え直した。 ウエートトレーニングも強化した。主に3番を打つ山浅龍之介(2年)は補食も増やし、東北大会決勝時に72キロあった体重が11キロ増えた。「球を打ち返す時の圧が増した」と手応えを感じている。 積雪の影響で実戦練習が進まない中、年始からは室内練習場で疑似的な紅白戦も重ねた。全国の剛腕投手を想定し、実際よりも近くから投球して勝負する。本番さながらの緊張感。監督が審判役となり、打球の方向やバットの当たりから判定が下される。「左中間越えツーベース!」。選手たちはその声に喜び、声を掛け合う。山浅は「いかにミスなく振り抜くかを追求している」と一球一球に集中する。ナインは全国の注目投手の動画も見ており、イメージトレーニングがここでも生きる。嶋田怜真(2年)は「癖や球種も分析している。そのイメージを持って打席に立っている」と、努力を積み重ねる。 選手たちは打撃の弱さを自覚している。「その謙虚で、ひたむきな野球にかける姿勢がセンバツ出場につながったと思う」と指揮官は見守る。 春夏通じて甲子園の過去最高成績はベスト8。目標の日本一を達成すべく、猛練習が続く。【玉城達郎】