MTでEVは面白くなる? トヨタが本気で開発するギミック・マニュアル 半クラやエンストも再現
電気自動車を単なる工業的な商品にしない
トヨタは、バッテリーEVが単なる移動手段とならずに、内燃エンジンを積んだモデルと同じく、運転を楽しめるクルマにしたいと考えている。そこで開発が進められているのが、ギミックのマニュアル・トランスミッション(MT)だ。 【写真】MTでEVは面白くなる? 開発中のプロトタイプ レクサスとトヨタの現行EV LFAとGR86も (105枚) このシステムの開発には、既に3年間も費やされている。新しいモジュラーアーキテクチャをベースとする、2026年以降に発売されるバッテリーEVへ、オプション設定されるという。 基本的には、ソフトウエア上で電動ドライブトレインを変速したように制御するもの。ハードウエア的には、クラッチペダルとシフトレバー、タコメーターなどが追加される。電気的なものだから、シフトパドルでの変速も可能だという。 トヨタの技術者は、バッテリーEVの運転を楽しくするための一環として、豊田章男会長の意向を受けてシステムの開発を進めていると話す。電気自動車を、単なる工業的な商品にしないために。 バッテリーEVで動くMTは、どんな運転体験をもたらしてくれるのだろう。本来は、これまで多くのクルマへ一般的に搭載されてきたメカニズムではあるが、擬似的にバッテリーEVへ搭載されるという点では、前例がないシステムといえる。 今回、英国編集部はレクサスUX 300e上で実際に体験する機会を得た。車内へ追加されたシフトレバーやペダル類は、トヨタGR86のアイテムが流用されていた。
半クラッチやエンストも再現 驚くほどの真実味
かくして、バッテリーEVではないと感じさせることに成功している。MTのクロスオーバーを運転しているようだった。 システムをオンにし、シフトセレクターでDを選択するところまでは、通常のUX 300eと変わらない。それに続いてエンジン・スタートボタンを押すと、人工的なエンジン音が車内で再生される。 やや重めのクラッチペダルを踏みながらシフトレバーを倒し、1速へ入れる。レバーのストロークは短く、動きは正確。半クラッチを利かせることもできる。回転数を合わせないと、エンストを真似た状態にもなる。 速度上昇は鋭い。ベースのUX 300eを運転している時より、遥かに「加速させる」というプロセスへ関わっている感じがする。本来は、非常に淡白な印象のモデルだということを忘れるほど。 それ以外の反応も、MT車を細かく再現している。シフトダウンしてエンジンブレーキを効かせられるし、ニュートラルで惰性走行もできる。 低い回転数のままトップギアに入れると、トルクが足りず息苦しそうになる仕草も再現される。スピーカーから、ガタガタと振動する音が聞こえてくる。間違いなくギミックではあるが、驚くほど真実味があった。