ロシア軍「亀戦車」は何がいいの…? 防御モリモリ不格好だけど“新型” 21世紀の突撃砲に?
ロシア呼称は「新型戦車」
2024年4月9日、ウクライナ国防省がドローンで撮影した奇妙なロシア軍戦車の映像を公開しました。プレスリリースは、「ドネツク州のクラスノホリフカでロシア軍の攻勢を撃退したが、その中に『タートルタンク』(亀戦車)を発見した」と発表しています。映像では、4両の車両が縦列で前進していますが、後ろの3両は天井に日傘防御を付けた歩兵戦闘車で、先頭の車両はまるで小屋が動いているような奇妙な姿です。 なんて奇妙な姿だ… ロシア軍の「亀戦車」を見る(写真) 同じ時期にロシアのメディアは、「新型戦車」がドネツク州のクラスノホリフカへの最初の攻撃に参加してその価値を証明し、「クラスノホリフカの征服者」と呼ばれるそれは、不格好だが上手くいっていると投稿しています。 ウクライナのいう「タートルタンク」とロシアのいう「新型戦車」は、ほかのSNSへの投稿動画を見ても同種の車両のようで、正体はT-72戦車を、亀の甲羅のように鋼板ですっぽりと覆ったものです。中身は新型戦車ではありませんが、外見だけでは斬新な戦車といえなくもありません。 ウクライナでは、FPV(一人称視点)自爆ドローンや対戦車ミサイルのトップアタックを防ごうと、日傘や鳥かごのような防御を追加した戦車や装甲車が標準装備になりました。「タートルタンク」「新型戦車」はその究極形にも見えます。甲羅を被せた外見からも、鈍重になる、砲塔の動きが制限されて射界が狭くなる、視界が狭くなる、発煙弾発射器が使えない、乗員の乗降が不便、メインテナンスがやりにくいなど、デメリットだらけに思えます。果たして何が期待されているのでしょうか。
対ドローン防御は標準装備に
「タートルタンク」はクラスノホリフカ攻撃で、KMT-6地雷プラウを装備し地雷原を啓開しながら突破作戦の戦闘に立っていたようです。地雷に触れて爆炎に包まれる映像もあります。「タートルタンク」は1両だけではなく複数あるようで、FPVドローン対策用の電子戦用装置を甲羅の上に載せているものも確認されています。その姿は、陣地突破戦の先鋒に立ち反撃を引き受ける「被害担当戦車」のようです。 砲塔が旋回できなくなった故障戦車を無理やり戦線復帰させた窮余の策だとか、この甲羅の中に歩兵を添乗させて歩兵突撃を支援するのではないかとの意見も見られますが、歩兵の乗降はかなりやりにくそうです。 FPVドローンの脅威は、ロシア・ウクライナ戦争前まではほとんど注目されていませんでした。最近になってドローンによる損害が増え始め、日傘や鳥かごを現場改造で急遽、戦車や装甲車に追加しているのです。しかし現在では、対ドローン防御はすっかり標準装備となり規格化されて、工場で生産されています。「タートルタンク」は複数台確認されていますが、規格化されて量産しているかは分かりません。 ロシア・ウクライナ戦争では、戦車の役割は敵の戦車と戦う対機甲戦闘ではなく、歩兵の塹壕突破戦を支援することになっており、砲塔が旋回できず射界が狭いというのは必ずしもデメリットではなく、FPVドローンに対する防御力を高めるメリットの方が大きいと考えられたようです。第2次大戦でドイツ軍が投入した突撃砲にも砲塔がありませんでしたが、歩兵支援用として重宝されました。