【GQ読書案内】メンタルヘルスを整えよう!──「心と身の休息」を考えるための2冊
「不調」とつきあっていくための体験談 青山ゆみこ『元気じゃないけど、悪くない』(ミシマ社) 著者はフリーランスの編集者、ライターの青山ゆみこさん。この『元気じゃないけど、悪くない』は、2019年に発表され話題となった『ほんのちょっと当事者』(ミシマ社)の続編として書かれた連載をまとめたものだ。愛猫との別れ、不安障害やめまい、お酒との付き合い方、老いや身体の不調に向き合うことなど、2020年12月に青山さんが「心と身体のどちらも『ぽきん』と折れた」ときから、自分が変わったと実感できるまでの3年間が記録されている。 読んでいくと、青山さんは不調の中にあっても常に行動を積み重ねていたことがよくわかる。身体の変化を感じてパーソナルトレーニングに入会したり、夫の入院を機に食生活を変えてみたり。自分だけの仕事部屋を新たに借りて新しい環境を作ったり、精神科クリニックへの通院も継続しながら、コーピングのオンライン講座に申し込んだり。こんなふうに、誰の生活にも起こりうる「わけのわからない不調」とつきあっていくために、青山さんが実践した体験談がぎっしりと詰まっている。世代や性別が違うから自分にはわからない悩みだと排除せず、気になったらぜひ手にとってみてほしい。 日々の暮らしの中では、好調やそこそこな時間よりも、「元気じゃないけど、悪くない」状態の方が、圧倒的に長いように思う。不調からの回復というよりも、過去とも未来とも地続きな自分になっていく、本当の自愛の過程が描かれた、心が穏やかになる一冊だった。
贄川 雪(にえかわ ゆき) 編集者。本屋plateau booksの選書と企画担当、ときどき店番(主に金曜日にいます)。 本屋plateau books(プラトーブックス) 建築事務所「東京建築PLUS」が週末のみ営む本屋。70年代から精肉店として使われていた空間を自らリノベーションし、2019年3月にオープン。ドリップコーヒーを味わいながら、本を読むことができる。 所在地:東京都文京区白山5-1-15 ラークヒルズ文京白山2階(都営三田線白山駅 A1出口より徒歩5分) 営業日:金・土・日・祝祭日 12:00-18:00 WEB:https://plateau-books.com/ SNS:@plateau_books 編集・神谷 晃(GQ)