【GQ読書案内】メンタルヘルスを整えよう!──「心と身の休息」を考えるための2冊
編集者で、書店の選書担当としても活動する贄川雪さんが、月に一度、GQ読者におすすめの本を紹介。今月は「心と身の休息を考える」がテーマ。 【写真を見る】「自愛し心身を休めるってなんだろう?」を考える2冊をチェック!
忙しさがひと段落する4月末から5月は、メンタルヘルスが不調になりがちな時期とも言われています。今月読んだ本の中から、「自愛し心身を休めるってなんだろう?」を考える2冊をご紹介。怒涛の新年度を過ごされた人にも、気持ちのアップダウンがあった人にも、特に変化がなかった人にも、おすすめです。
33人の「休み」にまつわるエッセイ 群像編集部『休むヒント。』(講談社) 自分自身は休みをもうけない主義だ。月曜日や新学期のような、休みから日常に戻るときの落差を乗り越える方が私にはしんどいと学んできたから。それに、地続きの人生をオン/オフという概念で切り分けるのもしっくりこないし、無自覚な休日は労働の駆動装置になってしまうんじゃないかと、理屈っぽいことも感じている。 そのくせ、悪気はなく、その人を労っているつもりで「倒れる前に休んでね」「たまには休んでよ」と人にしょっちゅう言ってしまっている。4月は時期的に、休息や自愛にまつわる本を紹介したいとも考えていた。「休みってなんだろう。なんで私は人に休みをすすめているんだろう」と壁にぶち当たった。「仕事とは」「労働とは」よりもはるかに難問のような気がする。そんなタイミングで、この『休むヒント。』が目に入った。 本書は文芸誌『群像』(2024年1月号)に掲載された33人の「休み」にまつわるエッセイを収録したアンソロジーである。帯やタイトルから「休み方」「休みの過ごし方」の指南書だと想像していたけれど、そうでもない。休日の思い出、かつての療養の記録、本当の意味での休息とは何か、休息のためにやっているヨガのことなど、「休む」というお題に対する書き手たちの回答はとても多様で豊かだ。目の前の労働から離れて、休みとは何かを考えること自体が、十分休息になっているような気もしている。皆さんの休み観を、ぜひ聞かせてほしい。