<上海だより>“ノームコア”の誤解?拡大解釈の末の「性冷淡」とは?
2015年から中国のファッション系情報では「性冷淡」という言葉が出回り始め、今ではその概念はファッションだけではなく、内装はじめデザイン全般で使われる用語となっています。前回の記事では「主題性」という概念について紹介しましたが、ある意味「性冷淡」も性冷淡系レストランなど主題性の一つとして扱われている傾向もあります。具体的には、無印良品の家具のようなテイストがその代表例の一つとして認識されています。
そもそもこの性冷淡という言葉自体は読んで字のごとく、性に対して淡白、性欲減退を指し示す言葉でもありますが、もちろんそうした主義主張を振りかざした思想に根付いているわけではありません。ニューヨークのファッショントレンドにおいて「ノームコア」という概念が登場し、それを中国語で翻訳した場合に性冷淡という用語が使用されているようですが、この二つの言葉を見比べてどうもしっくりこない方も多いと思います。 日本でも欧米のトレンドや概念が持ち込まれる場合、意味の歪曲や一部分だけを切り取って紹介されることもありますが、ノームコアが性冷淡として中国に持ち込まれる上でも同様の事態が生じているようです。
先に紹介したように無印良品のインテリアをはじめ、元々の由来であるファッションで言えばジル・サンダーやA.P.C、アニエス・ベーなどが性冷淡の代表例としてよく挙げられています。要するに、シンプルであることがベースとされているようですし、さらに大きな括りとしてはミニマリズムを指す概念として「極簡主義」という言葉も頻繁に併用されています。 しかし、ブランド名が先行してしまうと「ノームコアとはそういうことなのか?」という疑問が拭えません。アメリカや日本でのノームコアに関する紹介としてはシンプル以上に「普通」や「普段着っぽさ」が重要視されていると思いますが、ジル・サンダーという高価なブランドが真っ先に登場してくる話にはなりません。そうすると、ノームコアにヒントは得ながらも、翻訳語というよりは中国で独自に発達しているトレンドであると考えた方が良さそうです。