常総学院、亡き名将の教え胸に 元エース監督の挑戦 選抜高校野球
恩師に勝利をささげるため、往年のエースが甲子園に帰ってくる。19日に開幕する第93回選抜高校野球大会。第5日(23日)に登場する常総学院(茨城)の島田直也監督(51)は1987年センバツで同校初の甲子園出場を果たし、同年夏に準優勝した当時の大黒柱。監督就任わずか半年でセンバツ出場を果たした。「新米監督なので緊張すると思うが、僕の胸の中には木内(幸男)監督がいる」。変幻自在の采配で同校を春夏通算2度の優勝に導いた亡き名将の教えを抱き、初戦に挑む。 常総学院を卒業後、プロ野球の日本ハムや横浜大洋(現DeNA)などで活躍し、引退後は独立リーグなどで指導者として経験を積んだ。そんな実績の持ち主でも、高校野球の監督となって初めて感じた重圧があった。「元プロの指導者なら、簡単にチームを甲子園に導くのだろう」という外部の視線が痛かった。 昨秋の関東大会期間中、眠れなくなると動画サイトを開いて以前の常総学院の試合を見た。「そうか、こういうサインで裏をかいたんだな」。木内さんの采配を見つめていると、ひととき重圧を忘れられた。その成果もあってかチームは準優勝を果たし、5年ぶりのセンバツ出場を有力にした。大会後、木内さんの自宅に結果を報告しに行くと、声も出しづらそうな中、初めて「よくやった」と褒めてくれたという。1カ月後、木内さんは89歳でこの世を去った。「もう少し長く野球の話がしたかった」 島田監督には目標がある。木内さんが甲子園で挙げた通算40勝を超えることだ。「木内監督が取手二(茨城)を率いて84年夏に全国制覇したのは53歳のとき。今から十分手が届くでしょう」と意気込む。戦術が進化した現代に、当時の「木内マジック」をまるまる引き継ぐつもりはない。それでも「常総らしい嫌らしい野球は継続していきたい」。 甲子園の舞台で選手が大きく成長することは、34年前の自身の体験で知っている。「せっかくの舞台で一つでも多く勝ちたい」。はるか遠くの恩師の背中を追って、まずは一戦必勝を期す。【長屋美乃里】