【実録 竜戦士たちの10・8】(24)巨人、FA槙原への厚遇に落合獲得宣言で主力の更改は大荒れのはずが…原、篠塚はあっさりサイン
FA宣言した槙原寛己への厚遇条件提示。さらに高額年俸の落合博満獲得宣言などもあり、主力が徹底抗戦の構えを見せていた1993年の巨人の契約更改だったが、いざフタを開けてみれば原辰徳、篠塚和典の2人があっさりとサインした。 12月2日に契約更改交渉に臨んだ原は8%ダウンの1億1500万円。篠塚は10%アップの8000万円。金額以上に原、篠塚のプライドをくすぐったのが“現役功労金”を検討するという球団側の案だった。 「球団の方から、FA資格を持ちながら権利を行使しなかった選手には、何らかのことを考えていると言われたものだから。ある種のボーナス的なものという感覚で受け止めている」と原。 球団代表の保科昭彦も「(功労金は)今までも選手が退団するときに出していたが、今後は制度的に(現役選手にも)内規で定めることを考えていると話した。これから原君たちと相談しながら決めますよ」と功労金の検討を認めた。 大荒れムードが一転、平穏スタート。だが翌3日、原、篠塚のベテラン2人が笑顔で契約更改を終えたのとは対照的に、渋い表情で初めての契約更改交渉を終えたのが松井秀喜だった。 「サインしました。こんなもんかな、という感じです」。初めての契約更改は80分粘ったが1060万円アップの1900万円。高卒ルーキーではセ・リーグ新の11本塁打。最後はクリーンアップも務めたが、チームの新たな顔としての看板料はなく「満足度は70、80%ですね」とため息がもれた。
逆に満面の笑みで「開幕1軍」と、目標を掲げたのが中日のドラフト1位・平田洋(豊田大谷高)だった。この日、編成部長の法元英明が愛知県豊田市の自宅を訪れ契約金1億1000万円、年俸840万円で仮契約を済ませた。 「やっとドラゴンズの一員になったという気持ち。開幕から1軍にいられるように頑張ります。2年、3年と言っていれば、来年、再来年、また良い投手が入ってくる。スタートが大切。まず1軍を目指します」 背番号も中日が初の日本一に輝いた54年、杉下茂とともに両輪として活躍した石川克彦。通算105勝を挙げ74年、82年と2度のリーグ優勝に貢献した三沢淳らが背負った11に決まった。 「一日でも早く、ユニホームを着て練習をしたいですね」。こちらは“金の卵”の初々しい笑顔がはじけた。=敬称略(館林誠)
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