大谷翔平を“ロボット”呼ばわりするアメリカ人記者も。リップサービスよりも大事なこと
マイケル・ジャクソンのダンスと大谷翔平の本塁打
たとえば20世紀後半、マイケル・ジャクソンの音楽とダンスは人種や国籍を超えて人々に感動を与えたが、トップアスリートのプレーにもそれに似たパワーがある。スポーツは単なる競争やゲームではなく、エクストリームな身体表現だ。フィギュアスケートや体操など、芸術性の高い競技は身体表現としてわかりやすいが、野球やサッカーといった競争性の高い競技にも芸術性を見いだすことはできる。 大谷にはきっと、自身が野球というスポーツを通じた表現者、あるいはアーティストであるという自覚があるだろう。 大谷は日本語でも英語でも、あまり多くを語らない印象がある。マスコミやスポンサーのインタビューには答えるが、大谷が発する言葉は当たり障りのない、優等生的な内容に終始することが多い。「チャンスで打てたのは良かったかなと思います」「明日も頑張りたいと思います」といった具合だ。ハッキリ言って、コメント自体はあまり面白くない。
アメリカ人記者がみた取材対象としての大谷翔平
ロサンゼルス・エンゼルスの地元紙『オレンジ・カウンティ・レジスター』の記者として、エンゼルスを10年以上取材しているジェフ・フレッチャーは著書『SHO-TIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』で、取材対象としての大谷についてこう書いている。 「そして仮に話したとしても、大谷は囲み取材でお決まりの言葉しか口にしないという定評ができあがっていた。あまりにも感情がこもっていないインタビューが続いたので、『ロボット』呼ばわりする記者までいた」 同じ日本人メジャーリーガーでも、たとえばイチローは現役時代、個性的な表現や独特の言い回しで注目を集めたり、とんちんかんな質問をする記者に「逆質問」して困惑させることもあった。ダルビッシュ有は公式の記者会見でもSNSでも、球界に対して「もっとこうした方がいい」「これはよくない」といった意見を積極的に述べ、賛否両論を巻き起こしてきた。新庄剛志はワールドシリーズ出場後に「五右衛門風呂に入りたい」とコメントして通訳を困らせるなど、毎回のインタビューが一発芸のようだった。 こうした先人たちの個性溢れる言葉遣いに比べると、大谷が発する言葉は極めて平凡で、まるでAIが回答しているかのように機械的だ。ChatGPTのほうがより気の利いたコメントを返すかもしれない。でも、その言葉の平凡さこそが大谷の、プレーの非凡さをさらに際立たせているという印象もある。