大谷翔平を“ロボット”呼ばわりするアメリカ人記者も。リップサービスよりも大事なこと
「英語はもちろん話したい」だが……
「英語はもちろん話したいし、話せても損はなく、いいことしかない。でも、僕は野球をするためにここに来ました。そして、フィールドでの僕のプレーが、多くの人たち、ファンとのコミュニケーションの手段になると感じています。あの件で僕が考えたのは、そういうことでした」 2024年がメジャー7年目のシーズンとなる大谷は、日常会話程度の英語力に問題はないと言われており、チームメイトたちと通訳を介さずおしゃべりする姿なども頻繁に見られる。ただほかの日本人選手と同様、試合中の重要なコミュニケーションやオフィシャルな記者会見の場では、通訳の力を借りている。微妙なニュアンスが間違って伝わってしまうことや、誤解を招く表現をしてしまうことを防ぐためだろう。 メジャーで19年プレーし、現在はシアトル・マリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターを務めているイチローも、あるいは2024年がメジャー13年目となるダルビッシュ有も、オフィシャルな場では基本的に通訳をつけている。彼らが通訳をつけるのは「英語ができないから」ではなく、プロフェッショナルとしての責任を果たすためだろう。
フィールドでのプレーこそが「多くの人たち、ファンとのコミュニケーションの手段になる」
公の場で英語で話したほうがアメリカのファンに親しみを持たれるだろうが、それ以上にプロとして仕事を全うすることを優先しているはずだ。チームメイトとのミスコミュニケーションが原因で試合に負けたり、自分の発言が不適切なかたちでメディアに取り上げられたりするリスクを冒す必要はない。大谷が言う通り、プロ野球選手にとって何よりも重要なのは、人前で英語を話すことではなく、プレーで結果を残すことだ。そして大谷は、フィールドでのプレーこそが「多くの人たち、ファンとのコミュニケーションの手段になる」という自身の考えを口にしている。 確かに僕らは、大谷がインタビューで語る言葉よりもまず、彼の特大ホームランや剛速球に魅了される。大谷の超人的なプレーの前では、言葉が随分とちっぽけなものに思える。僕らが大谷の言葉に感動したり感心したりするとしたら、それはまず彼のプレーがあるからだ。スーパースターの言葉だからこそ、みんながありがたがる。言葉そのものに価値があるのではなく、プレーあってこその言葉なのだ。