遠藤航の魅力を一言で評価するとしたら? 現地ファンに質問…声から見えた特別な存在感【現地発コラム】
リバプール広報担当の言葉が現実に
イングランド1部リバプールに今季加入した日本代表MF遠藤航は、試合を重ねるごとに存在感を増している。当初は日本人MFの獲得に懐疑的な声もあったなか、逆境を跳ね除けた遠藤の軌跡を追う。「FOOTBALL ZONE」では、「遠藤航の解体新書」と称し特集を展開。遠藤が“愛される理由”を現地の視点から明かしていく。(著者=山中 忍) 【写真】リバプール遠藤の先発「いかにすごいことか」 決戦前の一枚絵で堂々“センター”「スゲェ」 ◇ ◇ ◇ 「Yes, Endo(そうだ、エンドー)!」「Well done, Endo(いいぞ、エンドー)!」と、遠藤航のプレーに反応するリバプールファン。今季後半戦のアンフィールドでは、こうしたホーム観衆の声を耳にする機会が増えている。 現地時間4月11日、まさかの大敗(0-3)に終わったUEFAヨーロッパリーグ(EL)準々決勝アタランタ戦第1戦でさえ例外ではなかった。チーム全体としては、及第点以下の出来。遠藤自身も、76分間のピッチ上で特筆すべきパフォーマンスを見せたわけではない。 それでも、ダルウィン・ヌニェスが先制ゴールを決めているべきだった前半15分、メインスタンド中央で観戦していた筆者は、1対2で競り勝ってチャンスのきっかけを作った遠藤を讃えるファンの声を聞いた。2点差とされて間もない後半17分には、ダッシュして倒れながらもルースボールを味方につないでアンフィールドに生気を蘇らせもした。 試合前、「懐疑論者から賞賛者に転身したよ」と言って苦笑していたのは、年配の地元サポーターだった。リバプール市内中心部の駅からスタジアムへのバスを待つ列で、うしろに並んでいた彼に「遠藤感」を尋ねてみた時のこと。聞けばサポーター歴50年という彼は、こう続けた。 「最初は、30歳の日本人MFがリバプールらしい補強だとは思えなくてね。意中の獲得候補に逃げられた末の苦肉の策でしかないと思っていた。正直、よく知らない選手だったから、大して期待もしていなかった。それが、ワォ! エンドーは素晴らしいよ。がらっと顔ぶれが変わった中盤に必要だったナンバー6としては、間違いなくトップクラス。しかも、単なるボールハンターじゃないことも分かった。奪ったボールを、どうつなぐべきかを常に把握していると思う。あれは、中盤の若手に見習わせたい。もっともっと評価されていい選手だ」 ホームゲーム当日に運行される直行バスを待つ列は、筆者の前に30名ほど。そこで、手前の若い男性2人組にも同じ質問をしてみた。背の高い片方は、「カイセドとラビアに感謝しないとな」というジョークで返答。昨夏にリバプールではなくチェルシーを選んだ、モイセス・カイセドとロメオ・ラビアの両守備的MFは、中位に低迷している移籍先で揃って不本意なシーズンを送っている。代わりに加入した遠藤の活躍は、さぞかし爽快に感じられることだろう。 もう片方は、「エンドーのプレーを見るのが楽しい」と言う。理由は、同じ今季新戦力で、当初は中盤の底で起用される試合が多かったアレクシス・マック・アリスターとの違い。「相手がフィジカルだと、マック・アリスターはバトルを嫌がっているみたいに見えるけど、エンドーはバトルを楽しんでいるように思えるんだ。マウスピースをしていなかったら、タックルを仕掛けに行く直前に絶対ニヤっと笑っていると思う」と言って、自らも笑っていた。 そこで思い出したのは、シーズン序盤に聞いたリバプール広報担当の言葉だ。彼は、地元紙「リバプール・エコー」の元番記者。「あのガッツとハードワーク。ワタルに『間違いなくファンに気に入られるから』と伝えた」と言っていた。