名将の魂受け継ぐ常総学院 鋭い観察眼で決勝打 選抜高校野球
第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)は第5日の24日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で1回戦3試合が行われ、常総学院(茨城)はセンバツ史上初のタイブレークによる延長十三回の末、9―5で敦賀気比(福井)を破った。 【2008年のセンバツで指揮を執る木内幸男さん】 鋭いゴロが、飛びついた二塁手のグラブをかすめて外野の芝へ転がった。常総学院の5番・秋本が敦賀気比の想定を上回る決勝打を放ち、センバツ初のタイブレークとなった接戦を制した。 延長十三回無死一、二塁。先頭打者で打席へ向かう前、秋本は島田監督から耳打ちされた。「様子を見るために1球はバントの構えをして、あとは打ってもいいぞ」 初球、2球目と送りバントに備え、猛然とダッシュした一塁手の動きを確認。「バントでアウトをあげるより、好機を広げた方が良い」と決断した。3球目、バントの構えからヒッティングに切り替えるバスターで外角直球をたたきつけ、右前適時打に。勢いづいたチームは得点を重ねた。 敦賀気比の二塁手・東は「バスターは予想していた」と悔しがったが、予想を超える強い当たりだった。「自分を信じた」と秋本が言えば、島田監督も「期待通り」とほほ笑んだ作戦は練習のたまものだ。プロ野球・日本ハムなどで投手としてプレーし、昨年7月に就任した島田監督は小柄な選手たちが大振りする姿を見かね、「自分たちに合った野球をしよう」と説いた。 選手たちは長打狙いではなく、中堅から逆方向への「低く強い打球」を求め、ひたすらバットを振り込んだ。秋本は「(前進守備の頭上を越えるように)一塁手の裏に打てたらと思った」。徹底した練習で身につけた技術を土壇場で発揮した。 「木内マジック」と呼ばれた的確な采配で、甲子園で春夏計3度の全国制覇を成し遂げた故・木内幸男元監督の下、常総学院が1987年にセンバツへ初出場した当時のエースが島田監督だ。マジックの肝は観察眼と選手への信頼。名将の魂を受け継いだチームには、のびのびとプレーする伝統も息づいていた。【石川裕士】 ◇全31試合を動画中継 公式サイト「センバツLIVE!」では、大会期間中、全31試合を中継します(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2021)。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/senbatsu/)でも展開します。