6年後、荷物の35%が届かなくなる!?物流の2024年問題
物流・運送業界では、4月からトラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用されるのにともない、輸送力の不足が懸念されています。「物流の2024年問題」が起きると言われてきた規制の適用から1日で1か月。ドライバーの拘束時間削減に取り組む沖縄の企業を取材しました。 【写真を見る】6年後、荷物の35%が届かなくなる!?物流の2024年問題 ■労働時間を圧迫する「荷待ち時間」 コンテナを積んだ貨物船が、浦添ふ頭にやってきました。週3回、福岡と沖縄を結ぶこの船には、およそ200本のコンテナが積まれています。到着に合わせて港には、物流・運送会社のトラックが数台待機していました。荷物の積み降ろしの順番を待つ「荷待ち中」、船の作業を見つめていたドライバーに話を聞いてみると・・・ 荷待ち中のトラックドライバー (Qどれくらい待つんですか?)「積み場所によりけりですね。こっちがだめなら別の船もあるんで、そこに回ったりします。本当に長いときは30分とか1時間待ちとか、たまにあります」 コンテナの積み降ろしには時間がかかるため、荷待ち時間が、ドライバーの拘束時間をのばす要因にもなっています。この日は、2本のコンテナを受け取るまでに30分ほど待ちました。 トラックドライバーの「2024年問題」について野村総合研究所は、全国では、2025年に28%、2030年に35%の荷物が運べなくなると試算しています。このドライバーの拘束時間を削減するために、改善が求められているのが「荷待ち時間」です。 ■危機を乗り越えるカギは 徹底した業務効率化 創業60周年をむかえる那覇市の物流企業・琉球通運。204年問題に備えて、従業員の意識改革とデジタル技術を活用した業務の効率化に取り組んでいました。 琉球通運 海上輸送課 小橋川崇課長 「ポイントがあるところにコンテナが今あるという目印になっております」 2年前に導入したのが、全国各地に散らばった自社コンテナをGPSで管理するシステム。 「今までは例えば大阪ですと、大阪の提携先の担当者の方に電話連絡。「どちらを走ってるの?」と電話連絡で確認していたんです。けど今はそういう電話連絡はなしで、画面でこのトラックは大阪のどちら走ってますよ、とすぐ見えるようになっている。業務的にはもう効率はだいぶ上がってます」 コンテナの稼働状況を把握し有効活用するためのシステムを、今後、ドライバーの荷待ち時間の削減にもつなげようと運用方法を検討しています。 「実際船から揚がると、この揚がったコンテナがGPS反応してすぐに取りに来てくださいという判断材料には、なり得るのでコンテナの荷待ちの解消にもなるんじゃないかなと思っております」 さらに、荷待ち時間を残業時間削減に変える試みも始まっています。待機中のドライバーが、スマートフォンで見ていたのは… 学習アプリ「トラッククエスト」。琉球通運が発案したこのアプリで、1回3分程度の動画を視聴することで国土交通省の「法定12項目」に定められた安全指導を受けることができます。 これまでは月に1度、会議室で実施してきた安全講習会をアプリに置き換えたことで、荷待ちなどのスキマ時間を有効活用でき、ドライバーの残業時間削減につながっているといいます。 琉球物流 喜納秀智社長 「我が社だけじゃなくて全体的に整備して慣らしていかないと。我々の業種はやっぱりエッセンシャルワーカー(暮らしに不可欠な産業)で、ジャストインタイム、必要なときに必要な量、それと365日24時間、お客さんのニーズに応えることが求められる。そのためにですね、あらゆる時間に走ったり、配達をしてるわけですね。社会の要求に応じて対応していくっていうこと、大変だなと思っております」 デジタル技術の導入など、新たな試みを重ねながら、働き方改革に挑んでいます。 ********************* 【取材後記】RBCリポーター・比嘉チハル 物流の2024年問題は運送会社だけの問題ではありません。例えば、県産品のシェアが高い菊などの切り花を本土に出荷する県花き園芸農業協同組合によりますと、東北方面を中心にこれまでより1日~2日、配送に時間がかかっています。そのため生産農家が、鮮度を保持するための梱包用ビニールを導入するなど、コストをかけて対策にあたっているいうことです。今後様々な場面で「物流の2024年問題」の影響が表面化してくるかもしれません。
琉球放送