故障復帰した34歳の今野がハリルJに不可欠な理由とは
骨折した左足小指のつけ根はもう痛まない。前日4日のジュビロ磐田との後半15分からは、73日ぶりに戦列へ復帰した。それでも、一抹の不安をぬぐい切れないのか。威勢のいい言葉は、MF今野泰幸(34、ガンバ大阪)の口から飛び出さなかった。 「90分間やっていないですからね。正直、わからないです。とにかく一生懸命練習して状態を上げて、連携を高めるだけですね」 場所を千葉県内から東京都内に移し、5日から本格的に開始された日本代表合宿。追加招集されたFW宇佐美貴史(アウグスブルク)を含めたヨーロッパ組15人に、前日にJ1を戦った国内組11人が合流。冒頭15分以降は非公開とされた練習後に、今野は偽らざる本音を打ち明けた。 不安の源泉をたどっていくと、ジュビロ戦でのパフォーマンスに行き着く。3点を追う状況で送り出されたが、放ったシュートは交代直後の1本だけ。試合もそのまま大敗した。 「リハビリをかなり一生懸命やったし、戸惑いもなかったんですけど。負けている状況で『攻撃を活性化させてくれ』と言われて入ったにもかかわらず、流れを変えられなかった。その意味では力不足だったし、試合後もショックだったというか、どうすればよかったのか悩みました」 長谷川健太監督の期待に応えられなかった悔しさが、生真面目な性格の今野の苦悩に拍車をかける。もっとも、ベテランの域に達した34歳には、日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督も、大きな期待をかけている。 先月25日に発表された日本代表メンバー。ガンバで復帰していないことを承知のうで、あえて今野を強行招集した。勝てば来年のロシア大会出場に王手をかけられる、13日のイラク代表とのワールドカップ・アジア最終予選第8戦(テヘラン)のキーマンにすえる構想を描いているからだ。 「イラク戦では今野のような選手が必要だ。攻守両面において運動量がものすごく多いし、テクニックよりもフィジカルで相手を凌駕するタイプ。気持ちの面も素晴らしいものがある。今野のような選手は、そう多くはいない。とにかく間に合ってほしい」 約2年ぶりに招集し、先発として大抜擢した3月23日のUAE(アラブ首長国連邦)代表戦。敵地で今野が演じた八面六臂のパフォーマンスが、指揮官の目には救世主に映ったのだろう。 守っては相手の司令塔、オマル・アブドゥルラフマンを封じる中心的な役割を担い、攻めては後半7分にダメ押しとなる、実に856日ぶりとなる代表通算3点目を積極果敢な攻撃参加から叩き込んだ。 直前に故障離脱した不動のキャプテン、MF長谷部誠(フランクフルト)の穴を補って余りある存在感を発揮。フル出場した今野はその代償として、試合中から左足小指のつけ根に痛みを感じていた。 「いままで日本の中心でプレーしてきたキャプテンが抜けたことでチームが崩れてしまったら、日本のワールドカップ出場というものが本当に遠のいてしまうと思っていた。最悪な事態になりかねないので、とにかく長谷部の穴埋めというか、勝ち点3を取って日本に帰ることだけに集中していたんですけど」