（写真：Game*Spark）

デベロッパーLifetap StudiosがPC（Steam）向けに2024年3月2日にリリースしたフライトアクション『The Brew Barons』は、ジブリ映画「紅の豚」にインスパイアされたという、自由な空の冒険とお酒造り要素を組み合わせたゲームです。 【画像全41枚】 ゲームの舞台は、海賊組織が酒造りを独占している1930年代の地中海の島々。プレイヤーはこのエリアで新たなブルワリーを設立し、自前の水上飛行機でお酒の配達や海賊退治などを行いながら、地域に平和を取り戻すために奮闘します。 水上飛行機と海賊、酒造り、冒険とロマンに溢れた要素がぎっしり詰まった本作。豊富なキャラクターや飛行機のパーツ、酒のレシピなどが揃えられた、じっくりと自分なりに楽しめる作品です。 覚えるべきことが多いのでまずはチュートリアルを ゲーム開始時には、ゲームの基本を学べるチュートリアルをプレイできます。ここでは飛行機の操縦や修理、補給、スキル使用、そして酒造りと配達など、様々な操作が順を追って説明されます。スキップすることもできますが、着水のタイミングなど操作が難しいところもある作品なので、まずは着実にチュートリアルからプレイすることをおすすめします。 飛行機はエンジンを始動して加速すると動き出し、その後は視点を移動することで上下左右へのコントロールを行います。尾翼のラダーなどもコントロールできますが、全体的にはわりとシンプルな操作システムです。高度や速度、方角などのUIも表示されているので、情報を把握しながら落ち着いて操縦することが重要です。 島々を探索しながら素材を集めてお酒を造り、酒場に配達してお金を稼ぎ、飛行機やブルワリーをアップグレードしていくのが『The Brew Barons』の主なゲームプレイの流れです。配達やクエストなどを行うことで名声が上がっていくと、地域を牛耳っている海賊と関わることになるイベントも発生します。 お酒造りに欠かせない素材は、麦や果実から魚、海藻などさまざま。飛行機には海水を利用した射撃や爆弾が搭載されていて、島にある畑や木を攻撃することで回収できます。麦などは低空飛行でプロペラで刈り取る必要があり、地上に激突しない速度・高度を維持する操縦技術も要求されます。 無事に素材を集めたら次は酒造りです。ブルワリー画面で合計100個の素材を組み合わせて破砕し、そこにイーストを投入することでお酒の素を作ります。この液体を醸造または蒸留することで、ビールやジンなどのお酒が完成します。ゲーム内ではある程度レシピが決まっており、作るレシピによってクオリティも5段階で変化します。 レシピの中にはイカを主原料とするサイダー（シードル）など空想的なモノもあります。素材の集め方もそうですが、かなりファンタジー寄りな世界設定です。 お金稼ぎと冒険のバランスが楽しい ゲーム内には昼夜の概念もあり、一日が終われば知り合いの酒場から注文が入ることもあります。酒の注文では「種類・原料・アルコール度数・必要数・クオリティ（指定されない場合もある）」が告げられ、その範囲内であればどのようなお酒を作って納品しても問題ありません。注文したお酒の原料やクオリティによって単価が決まるので、高級なお酒を納品すればそれだけ儲かるという方式です。 高級なお酒を作るためには当然高級な素材が必要になります。ゲーム内では基本的に本拠地から遠い島に行くほど素材が高級になるのですが、これらを集めるためには飛行機の装備をアップグレードしていかなければなりません。拠点のハンガーでは装備のアップグレードや、新たなパーツの購入・組み込みなども行えます。 本作で注意しなくてはならないのは、全てのパーツに長所と短所が用意されていることです。例えばとあるパーツには「ブーストの加速力が増加する/ブースト中のコントロールが低下する」などの2つの効果があるので、他のさまざまなパーツを組み合わせて上手く個性を活かす構成を考えなくてはなりません。アップグレードはデメリットがないので、まずはこちらを優先するのがおすすめです。 お金などを集めてパーツを買えば、大型の飛行機も作れるようになります。大型機は燃料タンク容量・積載量がすべて高いので、遠方の島への素材集めに活躍してくれます。耐久力も高いため、海賊の飛行機との戦闘でも安定します。もちろん小型機の取り回しの良さも魅力なので、用途によって使い分けるのも重要です。 ゲーム内でお金を稼ぐ方法は配達のほか、島に隠されたコンテナやサルベージ、突発のクエスト報酬などがあります。また、海上のボトルメールからレシピを発見したり、他の島の酒場で従業員を雇用できるケースもあるので、「冒険」によって経営面を大きく有利にすることもできます。ブルワリーのアップデートではお酒の価値を高めることもできますよ。 冒険範囲を広げていくのも重要ですが、飛行機の修理や燃料代も決して少なくありません。どれくらいお金を稼ぐのか、どれくらいの距離を飛ぶのか……そういったバランスを考えながらプレイするのが非常に楽しい作品です。きれいな街中の上空や教会、史跡などを観光しても、海を渡って遠くに見える島を目指すのもどちらも魅力満点です！ 説明の少なさは不親切に思うかも知れない 自由なフライトとカジュアルな経営が楽しめるのは本作の魅力ですが、一方で素材集めやイベントに関して「やるべきことの多さに説明が足りない」という大きな問題点があります。 素材の中には「空中の空気の渦に入る」「海中を爆撃する」という入手方法のものがあるのですが、基本的にはノーヒントです。多彩なレシピが用意されている作品なので海中素材はなくても大きな問題はないのですが、空中で手に入る素材が酒造りに重要な「麦」のひとつなので、酒造りの依頼にも大きく影響してしまいます。 また、特定パイロット/サブパイロットの組み合わせでイベントが発生し、クリアすればパイロットの強化に繋がります。初期状態のパイロットには必ず短所があるため、イベントの達成は重要な要素。しかし、こちらもチュートリアルを含めて一切説明がありません。せめてチュートリアルで選ばれる2人がイベント用の組み合わせだとわかりやすいのですが……。 もちろん、「親切に説明してくれるゲーム」が必ずしも優れているわけではありません。しかし本作はあまりにも説明が少ないため、リリース当初からSteamフォーラムでプレイヤーからの質問が多数寄せられていました。そうして開発者が直接答えざるを得ない状況が発生していたのは、やはり「不親切」だったと感じてしまいます（空中素材に関しては開発者も「ゲーム内で説明がない」とコメントしていた）。 さらに、リリース時から今に至るまで、ゲーム内にまだまだ多くの不具合が残っています。筆者は「海賊の船がどうやっても倒せない（ライフが減らなくなる）」「突如操作がロックされる」「ゲームが強制終了する」「一部UIが消える」といった不具合に遭遇しました。アップデートによって現状はかなり解消されていますが、動作を含めいくつかの問題点は感じています。 「紅の豚」から影響を受けたという『The Brew Barons』は、水上飛行機や世界のデザインや雰囲気など、とても大きな魅力にあふれています。島々を巡る素材集めや作ったお酒の配達、海賊たちとの戦いなど、飛行機を活かして「冒険感」を出している各種システムもカジュアルに楽しめます。 ただ飛行機で飛んでいるだけでも楽しめるところも、本作の醍醐味です。加速し続けると空気を切り裂くようなエフェクトも入り、非常に気持ちのいいフライトが楽しめます。また、水上へのランディングが綺麗にできればサブパイロットが褒めてくれたりと、ゲームを楽しく感じさせようとしている意欲に関しては言うことなしです。 マウスでの直感的な操作は最初難しいですが、慣れてくると海面ギリギリを舐めるように急上昇！といった“魅せるフライト”も自由自在になっていきます。戦闘では多少のダメージを覚悟して接近戦で一気に勝負を仕掛けたり、ターンを駆使してテクニカルに飛び回ったりと、場面場面で好きなように遊べる懐の広さも魅力的です。 ただし、やはり気になるのは説明不足な部分。自分で探し出す楽しみがあることもわかるのですが、もう少しヒントの提示があればより遊びやすくなると思わされます。ありがたいことに、アップデート対応はリリース直後から積極的。不具合の改善やバランス調整、新たなオプション追加などが行われているので、今後に期待したいところです。 総評：★★☆ 良い点 ・水上飛行機で飛んでいるだけで気持ちいい！ カジュアルにもテクニカルにもフライトを楽しめる ・冒険と探索、お金稼ぎとアップグレードのバランスを考えながらプレイする（経営）戦略的な面もある ・適度なファンタジー感を活かしたロマンあふれる設定、イベントが魅力的 悪い点 ・説明不足な部分が多く、ヘルプの充実が待たれる ・一部は解消されているものの、ゲームプレイにとって重大な不具合も多い 「Game*Sparkレビュー」ではハードコアゲーマーなライターから読者に向けて、オリジナルレビューをお届けします。対象となるタイトルはAAAからインディーまで、ジャンルやプラットフォームを問わず「ハードコアゲーマーのアンテナが反応するゲーム」です。 このレビューでは、3段階評価をベースに「良い点」「悪い点」を挙げながら総評を下します。最低評価は「難アリ/オススメできない」、中評価は「ふつう/そこそこオススメ」、最高評価は「とても面白い/とてもオススメできる」に当ります。「プレイレポート」として公開している記事では、本企画と同様の評価を付けません。また、記事の性質上、ストーリーなどの「ネタバレ」を含む場合がありますので、閲覧の際はご留意ください。 レビュー記事に使ったゲームは「編集部およびライターが購入した物」であり、デベロッパー/パブリッシャーから提供されるゲームソフトは利用しません。また、「Game*Sparkレビュー」は「PR記事」と一切の関係を結ばず、すべての評価内容がライターの価値観に基づきます。特定の企業やプロモーション、ユーザーコミュニティにも影響を受けません。 なお、マルチプラットフォームで展開されている作品においては、対応している機種のうちのひとつのエディションのみをプレイし、評価します。そのため、本文内でプレイした際の使用機種についても明記しています。