「多様性」の時代を生きる日本人へ...人間関係が楽になる!中学生から始められる「エンパシー」を育てる方法とは
欧米の授業に学ぶ「エンパシー」の高め方
欧米の授業では、歴史の時間にこの方法を取り入れたりしてるんだ。 アメリカの南北戦争の歴史を勉強する時に、リンカーン大統領役の生徒に「どうして南北戦争を始めたんですか?」「勝つと思っていましたか?」なんて質問するんだ。 その生徒はもちろん、事前にリンカーンについていろいろと調べておくんだよ。 で、南軍のジェファーソン大統領役の生徒がいて(もちろん、事前にいろいろと調べているんだ)、北軍のリンカーンに対していろいろと議論を挑むんだ。 周りの生徒は、それを聞いて、南北戦争に反対するか賛成するか、どちら側につくかを議論する。なんか、単語と年号だけを暗記する社会の授業に比べて、うんと面白そうな感じしない? 「エンパシー」の能力はこうやって高められていくんだ。 ぼくからもひとつ、こんな質問。 「どうして、桃太郎に出てくる犬は、きびダンゴひとつで、鬼退治なんていう命の危険があるものに参加したんだろう?」
一番納得できる答えは?
きびダンゴって知ってる? たぶん、昔のきびダンゴは食べたことないよね。申し訳ないけど、あんまり美味しいものじゃない(おみやげで売られている今のきびダンゴは、もち米や水アメが主な成分だから美味しいんだけどね)。 そんなものひとつで、死ぬかもしれない鬼退治に、どうして犬は参加したんだろう? ぼくは、横浜の中学校の授業の最後にこの質問をした。 まず、隣同士でいろいろと話して、お互いが面白いと思った意見を発表してもらった。 内気そうな男子中学生も、熱心な女子中学生も発表してくれた。 君はどうしてだと思う? 少し考えてみてくれないか。 「死ぬほど腹が減っていたから」「ものすごく淋しかったから」「家族を鬼に殺されて復讐したいと思っていたから」「桃太郎に一目ボレしたから」「鬼がじつは財産を持っているのを知っていたから」……まだまだ、いっぱい出てきた。 どれが正解なんてないよね。犬に聞いてみないと分かんないけど、犬語は分からないからね(笑)。 いろんな答えの中で、君が一番納得できるものはなんだろう。 いろんなやりかたで「相手の立場に立つ方法」を上達すること。それが、よりよく生きられる方法だとぼくは思っているんだ。 『「誰かの真剣は、誰かの迷惑」…? 迷惑をかけないことばかり気にする日本人が見落としがちな「おたがいさま」の精神』へ続く
鴻上 尚史