証券業界大手、畑違いのパプリカを大量生産 大和証券グループ本社、農業の「負のスパイラル」打破に挑む
さらに、「農業ファンド」を通じた投資によって新規案件の開発や、異業種参入が進むと期待を込める。 ▽農業と金融の掛け合わせ 大和フード&アグリの久枝和昇社長は、このような農業と金融の掛け合わせは「日本で成長する市場だ」と力を込める。 大和フード&アグリは今年4月に「北海道サラダパプリカ」(北海道釧路市)への出資を発表。冷涼な気候のパプリカ生産地を確保した。 静岡県磐田市の生産設備とともに稼働させることで、通年での安定供給が見通せる。こうした動きも、将来的な大和証券グループの農業ファンド事業を見据えた布石だとみられる。 ▽コンサルティング業務も展開 もう一つの大きな狙いは、農作物生産や食の分野のコンサルティング業務だ。 近年の物価高により、農業も肥料や農薬の価格や光熱費の上昇による打撃を受けている。 ただ、静岡県磐田市でのパプリカ生産ではコスト削減などにより、大和証券グループが経営に本格的に加わった2021年以降に黒字経営を続けている。
大和フード&アグリはパプリカを作ることで培ったノウハウを基に、農業への新規参入を目指す企業に助言するコンサルティング業務を2023年6月に開始。久枝社長を含む4人が相談に乗っている。 その中の1人、藤田葵さんは「生産候補地選びや事業構想などの初期段階の相談も多い」と説明する。他の業務には設備の設計や、技術面でパートナーとなり得る企業の選定、人材募集や補助金の取得、販路開拓や自治体との交渉への同席も含まれる。 ▽大企業向けが中心 これまでに手がけたコンサルティング業務は大企業向けが中心だ。大和フード&アグリの久枝社長は「資金を自社で用意できる大企業に助言し、参入は自らのお金で挑戦してもらっている」と説明する。 農業は現状では、個人事業主が担い手の中心となっている。企業が組織だって大規模に展開している事例は限られており、ファンドを立ち上げられるほどのダイナミックな投資対象は少ないのが実情だ。
▽個人がパプリカ生産設備に投資も 大和フード&アグリの久枝社長は「コンサルティングを通じて事業者を育て、大和が農業ファンドを持つことも視野に入れたい」と語り、自社のパプリカの生産設備もファンドの投資対象にすることを視野に入れる。 大和証券グループが農作物生産の当事者として思い描く未来は、大規模な事業者による効率的な農業だ。収益が上がり、就農者が増え、日本の大きな課題である食料安全保障の強化につながると期待する。 個人投資家にとっては株式や債券などの有価証券に加え、農業ファンドも投資対象としてより一般的に検討されるようになる日もそう遠い先ではないのかもしれない。