証券業界大手、畑違いのパプリカを大量生産 大和証券グループ本社、農業の「負のスパイラル」打破に挑む
生き馬の目を抜く証券業界の大手企業、大和証券グループ本社が大量生産に乗り出したのが、野菜のパプリカだ。低収益とされてきた第一次産業の農業に将来性を見いだし、得意とする投資とコンサルティングの事業の有力な対象になると位置付けている。農業は高齢化や作業の負荷から従事者が減り、耕作放棄地の広がりで生産性が低下し、収入も伸びず魅力の低迷で担い手がさらに減少してしまう「負のスパイラル」に直面している。大和証券グループは自ら野菜を栽培し、農業生産のノウハウをつかむことでこれを打破しようと挑戦する。(共同通信=徳光まり) 【写真】700人全員に出社義務のない会社 面接官は、なんとドイツ在住 「東京の狭い場所にみんなが集まって働くスタイルは…」「エリアが人をしばっている」
▽みずみずしいパプリカ 静岡県磐田市の3ヘクタールの敷地に、「パプリカハウス」と名付けた高さ6メートルのビニールハウスがいくつも並ぶ。 大和証券グループ本社の傘下企業、大和フード&アグリ(東京)がオランダの最先端のスマート農業技術を導入し、運営を統括している。人の背丈を上回る高さの枝から鮮やかな赤や黄色のパプリカが実を付けていた。 冬から夏にかけて収穫するパプリカはぷっくりと膨らんでつやがあり、みずみずしい。栽培している高糖度の品種のパプリカとしては、国内最大級の生産量だという。 ▽大和系とはあまり知られず 生産の実務を切り盛りするのは大和フード&アグリの子会社、スマートアグリカルチャー磐田(静岡県磐田市)だ。約60人の雇用を抱える。 栽培する作物にパプリカを選んだのは、天候に左右されにくいビニールハウスで生産できる園芸作物で、国内の競合相手が比較的少なく、さまざまな料理で使いやすいためだという。
子会社の社名や商品名には「大和」の名前が付いておらず、事業の音頭を取っているのが大和証券グループであることは地元であまり知られていないという。 ▽生産設備を「農業ファンド」に 大和証券が主力とする証券業務は株式や債券、投資信託などの有価証券の引き受けと募集、売買などで、一見するとパプリカ栽培とは関連がないように見える。 しかし、金融業界ではオフィスビルや物流施設、太陽光発電設備などの運営に携わる不動産投資信託や、インフラファンドが広がっている。こうした仕組みが、パプリカなどの野菜の生産設備にも応用できると大和証券グループはみている。 ファンドは、個人を含めた投資家から集めた資金の受け皿だ。投資家は効率的な資産運用を狙ってお金を出し、出資に応じたリターンを得られる。 オフィスビルのファンドならば賃料の一部が出資者に還元される。太陽光ならば売電収入が取り分になる。 このようなファンドの仕組みを農業の生産設備にも採用すれば、野菜生産に伴う収益の一部を投資家に配分できるようになると想定している。