折り紙を半分に折る作業を続ける人口減少社会 ── 産経新聞・河合雅司氏
■自分の問題としてとらえ考える
── 社会全体の取り組みが必要だということですね。一方で個人の意識の問題もあるのではないでしょうか? 河合氏 高齢者が働く場所を増やすとか、24時間社会からの脱却などは政策的に対策が打てるわけですが、少子化対策は実は政策ではないのです。本の中で現物給付1000万円という提言を書きましたけど、社会的な機運がなければ子供は増えません。カップルが安定や希望を社会に見いだしてこそ子供を持とうとなるわけであって、1000万円を給付する政策を打つことが少子化に歯止めをかけることにはならないと思います。「これができていないから少子化が進んでしまった」ということではないですね。政策論ではなく、子供がほしいと思っているカップルがその希望を実現できるよう、社会の雰囲気を変えていくことが重要なのです。そのためには、すべての人が意識や発想を変えていかなければなりません。そうしなければ少子化問題には太刀打ちできないのではないかと思います。 ── 1人1人が考えていかないとダメですね。 河合氏 それぞれの分野、仕事の中に少子化、高齢化に伴う影響、課題があると思いますので、自分の問題としてとらえなおして考えていただきたいですね。その結果、もしかしたらビジネスチャンスにつながることもあるかもしれません。結果としてそれが社会を好転させていくことになるのであれば、それこそウィンウィンの関係になりますね。ビジネスチャンスを掴んだ人は経済的に豊かになるし、その人が生み出す商品やサービスによって人口減少問題がいくらかは解決に向かうかもしれない。社会全体ととてもいい方向に向かっていくことになるのではないかと思います。もちろんビジネスだけでなく、ボランティアであったり、身近な問題の解決であったりするかもしれません。この本をきっかけにもう一度、自分の役割、やれることを考えて欲しい。それが処方箋に込めた私の思いです。
【河合雅司】かわい・まさし。1963年、名古屋市生まれ。産経新聞社論説委員、大正大学客員教授(人口政策、社会保障政策)。中央大学卒業。内閣官房有識者会議委員、厚労省検討会委員、拓殖大学客員教授など歴任。2014年、「ファイザー医学記事賞」大賞を受賞。主な著者に『日本の少子化 百年の迷走』(新潮社)、『地方消滅と東京老化』(共著、ビジネス社)など。