急増の緑茶輸出 主役は抹茶 欧米では「スーパーフード」 スイーツ需要も
緑茶の輸出が伸びている。主役は抹茶で、2023年には抹茶を主体とした粉末状緑茶が緑茶輸出量の約6割に上る。健康志向の高まりから欧米などではスーパーフードとして抹茶が注目され、ラテやアイスなど飲料、スイーツ需要が拡大する。産地は輸出先の検疫に合わせた防除体系を組み、有機栽培も広げて供給力を高めている。 【グラフ】抹茶を含む粉末状緑茶の輸出推移
健康志向で注目
抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)の生産量は増加傾向だ。荒茶生産量のうちわずか5%の碾茶から作る抹茶が緑茶の輸出の6割を占める。生産者が出荷する荒茶段階の1キロ価格は、碾茶が煎茶の2倍で、生産者の増産意欲は高い。 海外では抹茶に含まれるカテキンなど栄養価が高いことから、体に良いスーパーフードとして注目。フレーバーとしての需要が広がり、輸出の追い風となっている。日本茶輸出促進協議会は、手軽に楽しめるコーヒー、紅茶に次ぐ第三の飲料として抹茶は定着しているとし、「海外では抹茶の特徴である渋味がポジティブに受け止められ、ラテやアイスなどで素材として使われている」と話す。 抹茶など茶類の製造・卸販売をするあいや(愛知県西尾市)は、1983年から煎茶を中心に米国に向けて輸出を開始。2001年には米国に現地法人を立ち上げ、今では米国を含め世界で四つの現地法人を展開する。 輸出拡大の転機は10年ごろに海外の飲食業界から声がかかったことだ。抹茶ラテなどミルクと合わせた商品が広がり、10年ごろに15~20%程度だった海外比率が、現在では海外への出荷量と売上高ともに全体の約60%を占める。カフェチェーンやレストランなど消費者に近い市場に売り込めたことで、抹茶商品が増えてかつ消費者がアクセスしやすくなったことが要因とみる。 杉田武男社長は「中東でも注目されつつあり、今後海外の市場はさらに広がる」と話す。
有機広げ供給力
拡大する海外の需要に対応しようと産地も取り組む。茶の輸出は、相手国に日本で使う農薬の残留基準がないことが多く検疫がネックだった。碾茶の生産が全国1位の鹿児島県では、各地に先駆けて、欧州連合(EU)や米国などにも輸出しやすい有機栽培に取り組み、有機JASの面積(茶畑)は全国の半数を占める。病害虫に強い品種の導入や機械化による労力軽減に加え、農薬の飛散が少ない中山間地での生産が奏功した。 県は2025年度の茶の輸出目標を20億円(抹茶16億円、煎茶4億円)に設定し、有機栽培の面積拡大や碾茶の生産安定と品質向上などに取り組む。(菅原裕美)
日本農業新聞