『進撃のガチ中華』出版記念インタビュー「中華料理の神髄とは何か?」
「黄金週」(ホアンジンジョウ)と中国でも呼ばれるGWを迎え、今週は特別編をお送りする。本誌コラム「北京のランダムウォーカー」で、連載720回を超える「中国ウォッチャー」の近藤大介が、新著『進撃の「ガチ中華」』(講談社刊)を上梓した。そこで、いまなぜ、「ガチ中華」が熱いのか!? 現代ビジネス編集担当の日野正浩が、緊急インタビューを行った。 【写真】スタバを超えた?東京を席捲する中華式カフェ「COTTI」の知られざる物語
池袋エリアだけで、100軒以上!
日野: このたびは、『進撃の「ガチ中華」』(講談社刊)の出版、おめでとうございます。この本は、東京に生まれた16軒の「ガチ中華の名店」の紹介本というより、表紙の帯にも書いているように、中国ウォッチャー・近藤大介の「快食エッセイ」ですね。一気呵成に読んで、まだ一軒も行っていないのに、もうお腹一杯になっちゃっいました(笑)。 近藤: ありがとうございます。「快食エッセイを読んでお腹一杯になった」と言われるのは、最高の「誉め言葉」ですよ。 日野: それにしても、このコラムで毎週毎週1万字も、「シュウキンペイ(習近平)がどうした」とか、お堅い中国政治のことを書いている近藤さんが、今回のテーマは一転して「ガチ中華」。この心境の変化は一体どういうことですか? 近藤: それは、私の肩書きが「中国ウォッチャー」だからです。日中を股にかけてカネを稼ぐビジネスマンではない(2009年~2012年の民主党政権時に北京でそれっぽいことをやっていましたが)。日中交渉に携わるチャイナスクールの外交官でもない(同前)。かつ中国ナントカ学会に入って中国を研究する大学教授でもない(2008年より週に一度、明大国際日本学部で「東アジア国際関係論」を講義していますが)。 では何者かと言えば、ただの「中国ウォッチャー」。こんなお気楽な肩書きを名乗っている手前、「シュウキンペイ」も大事ですが、14億人が日々食っている「メシ」もまた大事なわけですよ。分かります? 日野: はあ。まあ、何となく。ところで「ガチ中華」というのは、「ガチンコ中華」の略ですよね。つまり、いわゆる「街中華」や「和風中華」ではなく、中国から来たコックさんたちが、主に日本に住む中国人向けに作る、アレンジなしの中華料理。 近藤: そうです。日本人好みの味付けだとかを一切考えない、「本場そのもの」の中華。誰が付けたか、うまいネーミングですよね。 ちなみに私は昔から、「ガチンコ」と名の付くものが大好きなんです。サバンナの野生動物を映したテレビ番組はよく見るけど、上野動物園には行かない。後楽園ホールにも、ボクシングの試合は観に行くけれど、筋書きのある興行イベントには行かない。ボルドー5大シャトーは大好きだけれども、ボジョレヌーボーは飲まない……。 日野: ごめんなさい、ちょっと何を言っているのか分かりません(笑)。でも『進撃のガチ中華』を読んで驚いたんですが、いま東京がすごいことになってるんですね。日本人が知らぬ間に、「ガチ中華店」が、雨後の筍のごとく続々オープンしている。 近藤: そうなんです。総本山と言えるのが、池袋駅の西口や北口の一帯です。その数、何と100軒以上! 江戸時代に新宿から板橋宿へ抜ける街道だった「平和通り」という通りは、最近は「和平路」(フーピンルー)とも呼ばれている。中国人や「ガチ中華店」が増えたからです。 「ガチ中華店」はいまでは、山手線で池袋駅から2つ先の高田馬場駅や、3つ先の新大久保駅の界隈にも広がりを見せています。