NewJeansの日本進出で再認識した「生みの親」ミン・ヒジンの目利きの力
日本語版でも個性派クリエーターを起用
こうしたミン・ヒジンの"目利きの力"は、以前から知られている。前述の250にサウンドプロデュースを依頼したのを手始めに、The Black Skirts(コムジョンチマ)やOohyo(ウヒョ)といった個性派を積極的に制作面で取り込んできた。有名・無名を問わず独自の感性があると思った人を起用する姿勢があったからこそ、NewJeansは短期間でオンリーワンの存在になったと言えよう。 日本進出にあたっても、その方向性は変わらなかった。今回の東京ドーム公演の演出やセットリストも彼女の目利きによるものだろうし、日本デビュー曲「Supernatural」と「Right Now」のサウンドメイクも同様だと思われる。なかでも後者の「Right Now」だが、個人的には作詞に「satomoka」の名前が入っていることに「さすが、ミン・ヒジン」と思わず膝を打った。 <NewJeansにジャストフィットする「satomoka」の作風> 「satomoka」の日本語表記は「さとうもか」。2015年末にミニアルバム『ザ・ワンダフル・ボヤージュ』で正式デビューを果たした日本の女性シンガーだ。アマチュア時代から彼女のソングライティングは注目を集めており、心の奥底にある感情をチャーミングかつストレートに綴った歌詞や、凝ったコード進行にもかかわらずポップに響くサウンドなどで着実にファンを増やしていった。 とはいえ、活動開始からしばらくの間は玄人受けする存在で、知名度と人気が一気に上がったのは彼女の楽曲「melt bitter」がTikTokで頻繁に使用されるようになった2022年あたり。しかもブレイクしたと言っても、日本中の誰もが知っているレベルではない。 ミン・ヒジンがそのようなアーティストに作詞を依頼したのは、ものめずらしさではなく、単にNewJeansの個性にジャストフィットする作風だったからだろう。「Right Now」における「さあ ⾒つけにいくだけよ」「もう待てない」「⾔いたいなら⾔ってよ」といった真っすぐな表現は、さとうもかの得意とするところだが、NewJeansの軽やかに前へと進んでいくイメージにもよく似合う。ちなみに彼女は「Bubble Gum」の日本語バージョンも手伝っており、ミン・ヒジンの信頼度がいかに高いかがよく分かる。 ここ最近のミン・ヒジンは親会社との問題などでいろいろな報道があった。しかしながら、基本的にはずっと音楽の世界で勝負してきた人であり、聴く側もクリエイティブな面だけで評価するべきだと思う。NewJeansの日本デビューにともなう一連の活動はひと段落したが、次の一手がどのようなものになるのか。とにかく今はそれだけを楽しみにしたい。