イチローが憂う最新機器を使い回転数まで判明する超データ主義化の流れ
往を告げて来を知るーーというほどの話ではないかもしれないが、イチローやダルビッシュ有は、ちょっとした問いかけにも、本質を突いてくる。2人とデータの話をしていると、奇しくも同じようなことを口にした。 「(打球の初速などは)現場にいない人たちの楽しみ」(イチロー) 「回転数は、外側の人が見るもの」(ダルビッシュ) 昨今、2015年から大リーグで運用が始まった「Statcast」というシステムのおかげもあり、一球一球、一打一打、様々なデータが公開されるようになった。 投手なら、球速や球種といった従来のデータに加え、回転数、曲がり幅、リリースポイント、エクステンション(プレートからどれくらいホームベース寄りで投げたか)等々が瞬時に分かり、打者なら、飛距離やゴロ、フライの確率といった数値以外にも、スイングスピード、打球の初速、打ち出し角度などが容易にわかるようになった。 では、そうした情報を選手らはどう活用しているかだが、ダルビッシュは、「カーブ、スライダーの回転数は、多ければ多いほどいいんじゃないか」と漠然と話すも、「そこまで考えてやる必要はない」と話し、続けた。 「バッターも回転数のことなんて、考えてない」 おそらく、その通り。イチローにも今年のキャンプが始まった頃、相手投手の回転数のデータを事前に確認したりするかと聞くと、笑いながら言った。 「見るかい!」 とはいえ、打球の初速や投手が投げる球の回転数などが、選手評価に用いられるようになって久しい。 アストロズなどはこの春、選手のバットにICチップを入れることを提案したという。選手側の反対で実現しなかったと聞いたが、スイングスピードを測ろうとしたとみられる。 彼らは回転数などのデータにも注目し、全くの無名だったコリン・マクヒューらを発掘したこと知られ、彼のカーブの回転数が高いことに注目すると、カーブを軸とした配球を指示。結果、メジャーで未勝利だった彼は、14年から3年連続で二桁勝利をマークした。 今、大リーグ関係の求人情報を見ると、球団だけではなく、代理人の事務所さえもStatcastなどのデータ分析家を募集しているほどである。