「ユイ!ユイ!」なでしこ長谷川唯はなぜ英国で愛される? “世界一の環境”マンチェスター生活「名前呼ばれるの嬉しい」「背が小さくてよかった」
「フィジカルを諦めない」
しかし、試合中のピッチに目をやると“身長157センチ”は群を抜いて小さい。だが、4-3-3というシステムの中央で試合を支配しているのは長谷川だ。 「監督に一番大事だと言われてるポジションでやってるので。練習からしっかりいいプレーを見せていくことで、本当にみんなに信頼してもらっているなというのは試合中も感じます。本当にいい環境で、自分の好きなスタイルでサッカーできるのは幸せな環境ではあります」 シティのサッカーは男子チームのサッカーに近く、ボールをつなぐいわゆるポジショナルプレーに縦へのスピードが加わった、長谷川が日本で慣れ親しんだベレーザのサッカーの延長線上にあるものだ。だが、以前と違うのはシティでの長谷川はボランチであるということ。最終ラインに近く屈強な選手が務めることが多いポジションで、ダービーを見る限り、長谷川が当たり負けるシーンは記憶にない。 「もちろんトレーニングでいろんなことをやってますけど、自分のタイミングで(相手に)当たれたら勝てる自信もあって、実際まともに当たっても勝てるシーンがあって。そういう意味では(小さいから)フィジカルを諦めるっていうよりは、強化しつつ、いかに自分がいいタイミングでぶつかれるかを考えています。予測のところでボールがどこに来るか、だったり、セカンドボールを拾うためにボールをずっと見てるっていうよりは先に動く。予測のところは監督からもすごく評価してもらっているんです」 “フィジカルを諦めない”。少しでも上のレベルで世界と戦うためには、華奢な日本人選手でもこれからは勝負を避けてはいられない。その上で、長谷川の場合は持ち前の予測の速さが生きてくると考えている。 「やっぱり、こっちの選手は走ったら速いし、ぶつかったら強い。でも先に考えてたら先に全然動き出せる、予測の勝負で勝ってるっていうのがあるので」 そもそも、長谷川自身、小柄だったことが予測の速さにつながっていると説明する。 「体が小さかったりして自然とやっていた部分があるので、言葉にすると『背が小さくて、難しい経験をしてよかったな』っていうことになるんです。ポジティブに言うと、『小さくてよかった』っていう」 日本でプレーするよりも、スピードとパワーに勝る難敵に囲まれる環境下の方が力を感じやすいとも言う。 「海外に来るとさらにそれ(判断の速さ)を実感できるので、やっぱり考える力が身に付いたのは、身長のおかげでもあると思います。もちろん背が大きくてフィジカルもあってそれ(速い判断)ができるのがベストですけどなかなか難しいと思うので」 さらに、もともとはより攻撃的なプレーヤーだった長谷川だが、意外なことに今では守備的なポジションのほうが自らの力を発揮できると考えている。 「攻撃ではもちろん予測ができることで助かる部分とかポジショニングとかはあるんですけど、予測はむしろ守備の方が生きるかなって思っていて。インターセプトが得意っていうのは知ってもらってるけど、このポジションになったことで、より見ている人にも評価されやすくなったのかなとは思います」 一方で攻撃的MFとして知られていた長谷川にはゴールに絡むプレーを、という意見は今でも少なくない。 「小さい頃から見てもらっていたコーチなんかには『もう少し前でのプレーを見たいな』って言われたりはするんですけど、今、シティでのサッカーでは“前に行かないバランスタイプ”なんです。男子で言うと、ロドリのように前線でローテーションできたりするのがベストな形ではあるかなと思いますけど、今の自分のやることに集中している感じです。代表(4-3-3または3-4-3)では、前でも後ろでもプレーできる形だと思うので、しっかり自分のプレーを見せられたらいいなとは思うんです」 守備的MFとしていくつものベストイレブンに名を連ねる長谷川だが、攻撃力を見せるのはよりフレキシブルなプレーができる日本代表で、ということになりそうだ。 《後編「なでしこジャパンへの要求」に続く》
(「なでしこジャパンPRESS」了戒美子 = 文)
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