過去最高の「訴求力」 ジャガーXF D200へ最後の試乗 優雅な見た目 FRらしい充足の走り
トルクが頼もしいD200 スポーティなP300
今回試乗したのは、ジャガー・ランドローバーの2.0L 4気筒ディーゼルターボを積むD200。これは、マイルドハイブリッド化されたインジニウム・ユニットで、203psの最高出力を発揮する。 質感は洗練度が高く、特に中域トルクが太く頼もしい。ただし、エンジンと電気モーターが同時に働くような場面で、僅かにアクセルレスポンスが鈍くなる瞬間がある。燃費に優れ、高速道路を巡航させれば17.7km/Lは簡単に出せる。 電気アシストが加わることで、日常的な利用シーンでのトルク感が増しているのは明らか。アクティブ・ノイズキャンセリング機能が備わり、静寂性も非常に高い。 一方で、2.0L 4気筒ガソリンターボはスポーティ。最高出力250ps、最大トルク37.1kg-mのP250の場合、0-100km/h加速を6.5秒でこなす。最高速度は249km/hだ。パワフルなP300なら、300psで6.1秒を叶えている。 8速ATは、最後まで改善点が残ったままといえるだろう。上質なエンジンの輝きを、霞ませるほどではないが。 稀に変速を躊躇する場面があり、低速域での動作はもっと滑らかでも良い。ステアリングホイールの裏にはシフトパドルが備わるが、手で弾いても瞬間的にギアが変わるわけでもない。 だが何より、XFの強みは充足感に秀でた操縦性。登場が10年近く前だと考えると、改めて感心させられる。
後輪駆動らしい走り 過去最も高い訴求力
標準は可変式ではないダンパーで、これに20インチのアルミホイールを組み合わせると、僅かに乗り心地は期待へ届かない。しかし、ステアリングホイールは適度に重く感触豊か。姿勢制御は流暢で落ち着きが高く、後輪駆動らしい走りを楽しめる。 特に正確なステアリングのおかげで、自信を持って連続するコーナーを導ける。グリップ状態の把握もしやすい。大きなサルーンだが、ひと回り小さく感じられてくる。 豊かなトルクを活用し、ヘアピンカーブなどでは、リアアクスルを少し遊ばせることも可能。電子的なコントロールは完全にオフにでき、腕利きのドライバーの気持ちを削ぐこともない。 XFの英国価格は、約3万6000ポンド(約691万円)から。ステーションワゴンのXF スポーツブレークは、約4万ポンド(約768万円)へ上昇する。CO2の排出量は、ディーゼルのD200で146g/km。P250では186g/kmとなる。 生産終了を迎えたXFだが、訴求力は過去最も高まっていたように思う。荷室容量はライバルより狭いものの、インテリアは高品質で装備も充実。優れた乗り心地や操縦性といった強みは、現代でも有利な水準にある。価格や燃費も好ましい。 ジャガーというブランドの運命には、感傷的な気持ちを抱くかもしれない。しかしXFは、そんなことを忘れさせる完成度にある。 ◯:しなやかで安定した乗り心地 好バランスで魅力的な操縦性 1クラス下に並ぶ英国価格 上質なインテリア △:狭めのリアシート もう少しパワーの欲しい4気筒ディーゼル プラグイン・ハイブリッドが選べれば良かった
ジャガーXF D200 R-ダイナミック HSE ブラック(英国仕様)のスペック
英国価格:4万2750ポンド(約820万円) 全長:4962mm 全幅:1890mm 全高:1456mm 最高速度:230km/h 0-97km/h加速:7.8秒 燃費:17.9km/L CO2排出量:- 車両重量:1795kg パワートレイン:直列4気筒1998cc ターボチャージャー+電気モーター 使用燃料:ガソリン 最高出力:203ps/3750rpm 最大トルク:43.7kg-m/1750rpm ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)
マット・ソーンダース(執筆) ジョナサン・ブライス(執筆) 中嶋健治(翻訳)