2019年は「情報銀行元年」に? 個人と企業がデータをいかに管理し活かせるか
「情報銀行」という言葉を聞いたことがありますか。買い物などの行動履歴をはじめとする個人データ(パーソナルデータ)を管理し、個人の許可を得て企業などの第三者に提供する仕組みのことです。データがさまざまな形で流通し、そこから得られる便益をユーザーに還元できるように、政府も前向きな関与に乗り出しており、2019年は「情報銀行元年」になるでしょう。 【動画】個人情報を自分で販売 データ資本主義社会の新ビジネス「情報銀行」
購入履歴だけではなく1日の歩数や心拍数も
IT技術の進展で、現代社会では、私たち市民がさまざまな場面で開示したり、入力したりしている情報が蓄積されています。自分のプロフィールや住所、電話番号などの連絡先のほか、商品の購入履歴、現在の位置情報や健康状態までが分かってしまう時代です。世界的にはGAFA(ガーファ=グーグル、アップル、フェースブック、アマゾンの頭文字を並べた略称)と呼ばれる巨大IT企業が、彼らのビジネスを通じて集まった膨大な個人情報を集積していることの是非が問われています。情報が集まればさまざまなビジネスで活用できる反面、知らないところで自分の情報がやり取りされるリスクや気分の悪さがあり、個人情報を自ら主体的に管理すべきだという考え方も近年強まっています。 情報銀行は、まさにそうした考え方や意識の変化から生まれてきたサービスの形態です。個人のデータといっても、前述のような基本的なデータ以外にも多くあります。例えば最近は、個人が1日に歩いた歩数や、心拍数、歩き方の傾向といったデータをスマホなどに蓄積する人も多いですが、これらのデータは新商品やサービスを開発したい企業にとって、さまざまな活用の可能性が出てきます。そうしたデータを集約し、個人に代わって企業などに提供する役割を果たすのが情報銀行です。金融、広告、電機、印刷、情報、旅行、流通、電力など多くの企業や自治体が注目しています。
個人データを「生活」や「観光」に活かす実験
その一つである三菱UFJ信託銀行は、スポーツ用品大手のアシックスや、情報サービス大手のNTTデータなどと提携し、靴底のセンサーで足の動きをデータ化して収集する実験を行ったほか、印刷情報大手の大日本印刷(DNP)、中部電力、JTBなども地域生活情報や観光関連情報の収集など独自の実証実験を2月まで行いました。 三菱UFJ信託銀行などの実験は、歩行データを収集し、同意を得てデータを活用したい企業に提供するものです。約1000人が参加しました。 一方、DNPなどの実験は、「地域型」と「観光型」の2つのパターンで構成。地域型は、DNPが中部電力や豊田市(愛知県)と共同で、地域住民の電力の使用量や体組成計のデータを集約して地元のスーパーや商業施設に提供し、商品開発や配送サービスに活用してもらう実験です。一方、観光型は、DNPがJTBや東京・上野や京都の文化施設・飲食店などとコラボし、旅行者がパーソナルデータを登録すると、好みに合わせたスポットやお店選びなどを支援したり、旅行者が周遊する行動圏での消費を促したりする実験です。どちらのパターンも、生活や観光などの情報を消費者目線で社会インフラに反映させる方向を意識したものといえます。 情報銀行が注目されるのは、これまで十分に把握できていなかった個人のさまざまなデータが集約されることで、ユーザーごとにカスタマイズ(独自仕様化)されたサービスを提供することが可能になるからです。つまり、一人ひとりに適合したいわゆる「One to Oneマーケティング」が可能になるメリットがあるのです。