SNS時代に街中の「掲示板」に注目 20歳大学生が設置したわけ 筆跡残る→誹謗中傷しにくく 誰もが抱える「もやもや」な悩みを教えて
駅前ビルに設置してみると…
長野県茅野市湖東出身で、米カリフォルニア州の大学生、飯森直人さん(20)が、世代を超えて悩みを共有できる掲示板「カリキン」を発案し、注目を集めている。JR茅野駅前ビル「ベルビア」内のコワーキングスペース「ワークラボ八ケ岳」の掲示板には、人生の疑問や恋愛の悩みが記され、質問を見かけた人たちが独自の視点で回答。飯森さんは「最近の若者は…」と「大人は分かってくれない」のすれ違いを埋めたいとする。 【画像】実際に書き込まれた悩みと回答
周りは「固定観念が強い」…生きづらさ
中学生の頃から「固定観念が強い」周囲の環境に生きづらさを感じてきた。各地を旅したり、高校時代に海外へ留学したりして自身を見つめ直す中、「他の人はどうなのだろう」との思いが浮かんだ。若者も利用するワークラボ八ケ岳に2022年9月、掲示板を置いた。
10センチ弱の円形の紙に書いて掲示
2年弱の間に90件を超える質問が寄せられた。リンゴの実のような直径10センチ弱の円形の紙に質問や回答を書いて掲示板に掲示する。誰もが一度は抱える、「もやもや」してしまいがちな人生や恋愛の悩みを問う質問に、掲示板を見た人たちが時には率直に、時には優しく回答している。
人生や恋愛など相談はさまざま
例えば「(誰かが)死にたいと言った時、あなたはどうしますか」との問いには「死にたいと思う場所から一度離れてみてください。あなたが輝ける場所はたくさんあります」「『生きていてほしい!』と言います」といった複数の回答が寄せられる。
中には「誰か彼女になってください」との質問も。「彼氏がいるのでごめんなさい」と断ってみたり「いつかすてきな人ができると思いますよ」と励ましてみたり。「18歳になっても大人としての実感がない」という悩みには「大人という概念は『幻想』。言葉に惑わされず、あなたらしく生きるのが全てです」と助言している。
本物の掲示板だと「ネットでよくある誹謗中傷を避けられる」
飯森さんがインターネット上の掲示板を利用するのではなく、ワークラボ八ケ岳に本物の掲示板を置いたのは「ネットでよくある誹謗(ひぼう)中傷を避けられる」からだ。しかも、質問や悩みを書き込む紙には筆跡が残るなど「地域で困っている人をよりイメージしやすくなる」と話す。
掲示板の名前は植物が燃えた際の煙などに含まれ、植物の発芽を促す物質カリキンが由来。飯森さんは世代間のギャップを超えて新たな関係を築きたいとしており、新たな関係を「荒廃した山の芽吹き」にたとえ「山が命を芽吹かせるように、若者と大人の分断に終止符を打つ時だと思う」と考えている。