日本一は県勢初 歴史ある盲学校の全国弁論大会、塙保己一学園のカーンさん優勝 アニメや歌が大好きな3年生「広い世界へ飛び込んで」 抑揚100点…特別審査員の作曲・作詞家が絶賛「すごく心に響いた」
第92回全国盲学校弁論大会が水戸市で開かれ、埼玉県立特別支援学校塙保己一学園(盲学校=川越市笠幡)高等部普通科3年のカーン・ファティマ・フランシスコさん(18)が優勝した。戦前(1928年)から始まった歴史ある大会で、県勢が日本一に輝いたのは初めて。 カーンさんは、校内予選を経て関東・甲信越地区予選で優勝。同地区代表として全国大会に出場。7地区予選の代表9人で弁舌を競い合った。弁論のテーマは「大切な場所」。 左目が生まれつき失明状態で、右目が緑内障のカーンさん。小学校では、教師やクラスメートに視覚障害を理解してもらえず、つらく苦しい毎日だった。しかし、小学6年で転入した今の塙保己一学園で、ありのままの自分を受け入れ、優しく励ましてくれる教師や友人と出会った体験を弁論にした。転入直後、病気の進行で右目もほぼ見えなくなったカーンさん。「見えないから何もできない、ではなく、見えなくても見えづらくても工夫をすれば努力をすればできるようになることを知り、とても心が救われた」
弁論の最後に、良く通る声で「自分をつくろわず、あなたのままでいてほしい。そして自分の殻に閉じこもらず、広い世界へ飛び込んでいってほしい。そうすれば、きっとあなたにとって『大切な場所』が見つかるはず」と訴え、共感を得た。 審査委員長の堀越喜晴・明治大講師は「『ないものを数えるな、あるものを数えよ』。この王道の言葉をご自分の体験に則して、とても説得力をもって語ってくれた」と講評。特別審査員で作曲・作詞家のマシコタツロウさんは「(弁論が)超絶滑らか、抑揚100点。声の仕事ができるレベル。最後のメッセージもすごく心に響いた」と高く評価。カーンさんは「優勝できるとは思わなかった。驚きとうれしさで、涙でうるっとしそうになった」と全国弁論大会を振り返る。 現在、高等部の生徒会長。夏祭りや文化祭ではバンドのボーカルとして美声を披露。陸上部にも所属するなど、充実した毎日を送っている。学級担任の中川美枝子教諭(30)は「遠くにいても聞こえるほど笑い声が大きい。生徒会長としても発信力があり、学園生活を楽しんでいる」と話す。卒業後は高等部専攻科の理療科に進み、国家資格を得て、母校の教師になるのが目標。
「アニメや歌が大好き。暇があったらずっと歌っています。来年1月、ユイカのライブに行くのが楽しみ。自分の声を使った仕事も、ちょっと気になります」