飲食も可能に? リニューアルした豊田市美術館とは
改修工事で休館していた愛知県豊田市の豊田市美術館が10日、1年1カ月ぶりに再開館した。国内外の近代・現代の芸術作品を展示し、作品に合わせた展示空間を作ることで定評のある公立美術館。オープン20周年の節目に、どのような点を新しくしたのか、現地を訪ね、担当者に聞いてみた。
バリアフリー化を重点に
改修工事は2014年9月から、主に老朽化対策などに11億円をかけて、行われた。改修の全体統括を担当した同館主幹の田境志保さん(49)は改修点について「重視したのはバリアフリー化」と説明する。 バリアフリーは、障害のある人にとって社会生活でのいろいろな障壁(=バリア)を取り除くことをいう。今回の改修では、車いす利用者でも快適に館内を移動できるように、エレベーターや車いす利用者専用駐車場を新たに設けた。 特徴的なのは、天井高約9メートルある展示室そばに設けられたエレベーター。同室は、同館の売りの1つで、高い場所や低いところに移動して、違う視点で展示作品を鑑賞できる場所。室内に階段があり、自由に上り下りができる。このスペースで鑑賞する車いす利用者はこれまで、同室反対側のエレベーターに移動して上り下りをする必要があった。新エレベーターにより、移動の手間が省けて、健常者とほぼ同じ動線で鑑賞できるようになった。 バリアフリー化を重点にしたことについて田境さんは「利用者からの声に応えた」とした上で「施設ができたのは1995年で、バリアフリーの考えが重視されていない時代に設計された。そこを補った」と付け加えた。 1995年は、最大震度7を記録した神戸市を中心に甚大な被害が出た阪神・淡路大震災が発生。これをうけて建築の世界では耐震面を重視するなど、建築で重視する点が大きく変わった転換期で、バリアフリーの考えも浸透する。 田境さんによると、同震災以降に設計や建築された豊田市内の公共施設は、バリアフリー化が進んでいるという。しかし豊田市美術館の場合、同震災発生の頃はちょうど「内装に取りかかるほど工事が進んでいた」状態で、バリアフリー化の波には乗り遅れていた。