「神宮外苑再開発」問題が、都知事選の争点どころか実は都民が口出しすべき事案ですらないと言えるシンプルな理由
緑地面積も樹木の本数もむしろ増加する
では、具体的にどのように建て替えをしていくのか。 まずは第二球場を解体し、その跡地に、秩父宮ラグビー場に代わる新たなラグビー場を建設する。そして新ラグビー場が完成したら、秩父宮ラグビー場を解体し、その跡地に新たな野球場を建設する。そして新たな野球場が完成したら、現在の神宮球場を解体し、そこを広場にする計画だ。この広場は広域避難場所としての位置づけも兼ねた場所である。 野球・ラグビーといったスポーツイベントは途切れることなく行えるようにしながら、順次建て替えを進めていく計画だと考えればいい。 また、事業者側が用意している「神宮外苑地区まちづくり」というホームページには、「みどりの計画の2つのポイント」として、4列のいちょう並木を守ることと、現在よりも緑の割合を増やすことが明記されている。 ここまで理解したうえで、下の図を見てもらいたい。 左側が現状で、右側が完成後の姿だが、広くなるオープンスペースには緑地が含まれるわけで、明らかに将来のほうが緑の割合が多くなることがわかる。軟式野球場と第二球場がなくなるのだから、当然といえば当然だ。 もちろん、建設工事によって伐採される樹木はあるだろう。新しく植樹される木は伐採される木よりも若いから、枝も発達しておらず、付ける葉の数も当初は少ないかもしれないが、だからダメなんだ、これは緑を破壊する計画だというのは、私には屁理屈にしか思えない。 ちなみに樹木の本数は、従前の1,904本から1,998本に、5%ほど増加することになっている。
いちょう並木を損なう可能性はほぼない
そして、いちょうを守るという点では、こんなところまで気を使っているんだというのが、次の図からわかる。 「現計画」と書かれた左の図と「検討案」と書かれた右の図の違いはわかるだろうか。 赤枠で囲われて示されるところの、右下あたりを見てもらいたい。土の中に埋め込まれる基礎が、ガッツリ埋め込まれた状態から、ほんの表層にしか埋め込まれない形へと変更されている。いちょうの根が土の中で広がっていることを想定した場合に、それをなるべく傷つけないようにしようという配慮までしているのだ。 そして新しい野球場ができる予定位置から1.5m分いちょう並木に近いところで、樹木の専門医である樹木医の立ち会いのもとで土を掘り起こし、この位置まで根が張り出しているかどうかの調査まで、根を傷つけない配慮をしながら行っている。 長くなるので詳細は割愛するが、この位置で根の調査を行うのが妥当かどうかをたしかめるための別の調査も行っている。その調査結果として、新しい建築物ができる予定位置から1.5m分いちょう並木に近いところで根の調査を行っても、根を傷つける可能性はほぼないことを、事前に確認しているのだ。 それでもなおいちょうの木の生育についての懸念の声が上げられていることから、野球場の建設位置をいちょうの木からさらに引き離すセットバックを行うことまで検討されているのだ。