請求額は70億円...!「一人の個人投資家」が大企業相手に”異例の訴訟”を起こした「驚愕の理由」《ユニバ社・株主代表訴訟》
「ユニバーサル、逆転勝訴しました」 令和6年4月25日、時計の針が二時半を回ったころだろうか。広島在住の個人投資家・細羽強から一通のメッセージが届いた。 【マンガ】「長者番付1位」になった「会社員」の「スゴすぎる投資術」の全容 文面を何度も見直した後、ようやく私は、その日がユニバーサルエンターテインメント社(以下、「ユニバ社」)に対する第三次株主代表訴訟の高裁判決の日だったことを思い出した。 確か、請求額は70億円ではなかったか。一審判決がひっくり返ったのか。富士本淳社長にそれだけの支払い能力はあるのだろうか。 さまざまな思いが駆け巡った。長く裁判取材をしてきた私にとっても、ユニバ社第三次訴訟は異例づくめだった。
創業者の岡田氏が引き起こした、多額の損害が焦点
原告の細羽と知り合ったのは、今から10年ほど前のことになる。すでに、細羽は成功した個人投資家として、幾つかの上場企業の株を大量保有しており、株の世界では知られた存在だった。 だが当初、私は、それほどユニバ社の一連の訴訟に興味があったわけではない。事実、元従業員からの内部告発を受けて細羽が提起した「ユニバ社第一次株主訴訟」には、ほとんど関与していない。 本格的に取材を始めたのは、ユニバ社第二次株主代表訴訟からだ。細羽や代理人弁護士の勝部環震氏の話を聞いた上で、東京・江東区にあるユニバ社(旧アルゼ社)の創業者・岡田和生氏を約20億円で提訴する理由を聞き、捨て置けないと感じたことから始まる。 この訴訟については、過去に記事にしているため、本稿で詳細は省く。簡単にいうと、岡田元社長が中国人経営者と組んで、複雑なスキームのマネーロンダリングを行う過程で20億円を焦げ付かせた。しかし、ワンマン経営者で知られた岡田元社長に対して、社内でモノを言える人間はおらず、会社にそれほど多額の損害を与えたとしても、見過ごされるという異様な事態が起きていた。
負け戦を覚悟で、株主代表訴訟に踏み切る
「会社が一番大事にしなければならないのは、株主ではないのか」 細羽は至極単純な理由を語り、その筋を通すために代表訴訟に打って出ていた。裁判費用はもちろん、持ち出しだ。その上、株主代表訴訟で株主側が勝訴した事例はほぼない。情報は全て会社側にあるから、当然のことだ。なぜそんな負け戦をするのか。単純な正義感だけでなく、何か裏があるのではないか。私は最初そう訝っていた。しかし細羽が、本当に「ただの正義感」で裁判を闘っていることがわかるにつれ、私は安心すると同時に呆れてしまった。 「この人、株にだけ全ての能力がいってしまったのではないかしら……」 そんな思いにすら囚われたこともある。しかし今は、こういう人が世の中を変えていくのかもしれないと考えている。 岡田元社長の敗訴は最高裁でも確定し、約20億円の賠償金を同社に支払うこととなった。かつては長者番付ナンバー1に輝いたこともある岡田氏ですら、20億円の支払いは痛かっただろう。 二次訴訟では、途中から岡田元会長と対立を深めていたユニバ経営陣が原告と共闘路線をとることになり、「勝訴できるだろう」と踏んではいたが、さすがに、岡田元社長に対し、 「金20億円を支払え」 という判決を直で聞いた時は胸が震えた。
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