半世紀にわたり、プラモデルや無線操縦カーを販売してきた小関正吉さん＝寒河江市・ノブ科学模型社

　プラモデルや無線操縦カーなどを扱う寒河江市の「ノブ科学模型社」が28日、半世紀の歴史に幕を下ろす。社長の小関正吉さん（75）は、少年を夢中にさせたプラモデルが、価格上昇や興味の多様化で、大人の趣味になる変化を目の当たりにしてきた。県内の個人経営模型店は数店まで減り、小関さんも高齢のため引退を決意。思い出を懐かしみつつ、客が山辺町内に開く新店舗に在庫を託す。 　ノブ科学模型社は1974（昭和49）年に創業し89年に現地に移転。2014年まで天童市でも店を営んだ。10年ほど前まで客の大部分は子どもだったが、現在は9割が大人という。今の商品単価は3千～4千円で昔の6倍ほどになった。子どもの関心は、各種ゲームが中心になって久しい。 　ただ「模型は不景気知らず」という。新型コロナウイルス禍も巣ごもり需要で週末は70人、平日も50人以上が来店した。寒河江市西根に設ける無線操縦カー専用の屋外サーキット場も引き続き人気を集めている。

　小関さんは3年ほど前から耳が聞こえにくくなり、接客中に聞き返すことが増えたと明かす。迷惑をかける前に身を引くと決めた。そんな時に“後継者”として名乗り出たのが、山辺町から来店する古頭康弘さん（51）。小学生時からプラモデル作りが好きで、一念発起して燃料販売会社を退職。同町緑ケ丘2丁目の自宅脇に「ホビーショップ　ロックモデル」を11月中旬に開店させる予定だ。 　かつて個人経営の模型店は県内に多数あった。プラモデルはネット通販や大型家電店でも購入できるが、古頭さんは「ふたを開けてパーツ構成などを見る楽しさを味わえるのは個人店ならでは。気軽に足を運べる店にしたい」と話す。 　小関さんは、店内に積まれた数千個のプラモデルなどを見渡し「お客さんが親子2代で来てくれたり、たくさんの思い出がある」と懐かしむ。そして古頭さんに託し、「心置きなく引退できる」と穏やかな表情で話す。引退後はサーキット場運営を続けながら、古頭さんに助言していくつもりだ。