TRICERATOPS、活動休止前最後のライブツアー開幕「デビューして27年、今でもこうした景色が見られてとても幸せ」
白熱のステージが展開されたコンサートの終盤、和田が話し始めた瞬間に、会場内が静まりかえり、観客が一言一句を聞き逃すまいと耳をそばだたせていた。無期活動休止についての説明があるのではないかと考えたのだろう。和田からは特に、休止を決めた理由についての説明はなかった。バンド内のことであり、3人にしか分からないこともあるだろうし、言葉で簡単には説明できないこともあるだろう。和田のこんな言葉が印象的だった。 「デビューして27年、今でもこうした景色が見られてとても幸せです。これからもやることは一緒です。音楽が好きで、ギターが好きで、バンドが好きで。曲を作って、みんなに会いにいきたくて、ライブで演奏して、みんなのリアクションをもらって、テンションがあがって。これからもその繰り返しだね。人生ってことは予期せぬことがあると思いますが、こうして出会えたことは奇跡だと思っています。この絆を大切にしていきたいです」 この思いは林にも吉田にも共通するものだろう。ひとつだけ確かなのは、今回の無期限活動停止が、よりよい未来へと向かうために3人が下した決断であることだ。まっさらになり、さらなる高みを目指して精進していくことによって、きっと新たな未来が拓けていくに違いない。 無期限活動停止とは、バンドの今後の予定は白紙であることを意味する。だが、湿っぽいところのまったくないコンサートだった。それはおそらく、いつものツアーと変わらず、そのときにできる自分たちの最高の演奏を届けたい、という3人の強い意思が根底にあるからだろう。そもそも、あの3人には湿っぽさはまったく似合わない。ラブソングからもロックンロールナンバーからも、観客への愛を感じる瞬間がたくさんあった。TRICERATOPSのすべての曲が、実は広い意味でのラブソングであるのかもしれない。本編の終盤から、アンコールにかけて、そんなことを感じていた。そしてその思いは確実に客席に届いていたに違いない。笑顔と泣き顔を同時にもたらすライブとなったからだ。歌と演奏だけでなく、随所で3人から観客への愛を感じた。デビュー当時の3本のボーリングのピンが描かれたロゴマークが、ある場所にあしらわれていたり、懐かしい写真があるものに使われていたりする。今回のツアー、ステージはもちろんのこと、ディテールにも注目だ。 先のことは誰にも分からない。そもそも自分だって、明日どうなっているか分からないのだから、すべてのライブは一期一会のものである。言われなくても分かっていると言われそうだが、これからこのツアーに参加する人には、冬眠前の熊がエネルギーを貯めるように、TRICERATOPSの奏でる音楽のエネルギーを貯蔵しておくことをおすすめしたい。つまりやることはひとつ。ステージ上の3人の姿を網膜に刻みつけること、会場内に鳴り響く音を鼓膜に刻みつけること、そして、あのグルーヴを肉体に刻みつけることだ。ライブが終わっても、演奏された歌の数々が聴き手の内面に残した痕跡は、消えることがない。それは、一度結ばれた絆が消えないのと一緒だろう。 バンドとは発明だ。異なる3つの生命体の発する音が混ざり合い、火花を散らしあうことで、観たことのない景色を出現させてくれたバンドがTRICERATOPSである。1度発明されたものは、止まることはあっても、消え去ることはない。発明された事実は変わらないからだ。3人の奏でる音が重なったときに、聴き手の憂鬱や退屈を一瞬にして吹き飛ばし、ワクワクやドキドキをもたらし、ハッピーにしてくれる。ツアー初日の川崎CLUB CITTA’でも、27年間一緒にステージに立ってきた者たちだけが奏でられるバンドサウンドが、確かに鳴り響いていた。大いなる発明に感謝。発明品の今後は不明だ。未来はまだ誰も知らない。 Text:長谷川誠 <公演情報> 『TRICERATOPS 無期活動休止TOUR '24-'25“DEMOLITION&ELEVATION”』 2024年11月19日(火) 神奈川・川崎CLUB CITTA’ <ツアー情報> 『TRICERATOPS 無期活動休止TOUR '24-'25“DEMOLITION&ELEVATION”』 ■2024年 11月27日(水) 広島・LIVE VANQUISH 11月29日(金) 大阪・BIGCAT ※SOLDOUT 12月1日(日) 愛知・THE BOTTOM LINE ※SOLDOUT 12月8日(日) 北海道・cubegarden※SOLDOUT 12月15日(日) 宮城・Rensa ※SOLDOUT 12月21日(土) 新潟・新潟LOTS ※SOLDOUT ■2025年 1月10日(金) 東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)※SOLDOUT