さらば森田「えげつない心労」個人事務所の苦労語る
――「さらば」のコントは評判です。しかし仕事があるかどうかは営業次第。個人事務所で仕事はどうやって取ってくるのですか。 森田さん: まずマネージャーは業界の飲み会に積極的に参加して、ロビー活動のようにそこで売り込んでくれます。下戸のぼくも誘われれば絶対に断りませんし、ウーロン茶で朝まで付き合います。結果的に、それが仕事につながっています。草の根的というか、いや、雑草的な営業ですね。そしてなによりうれしいのが、芸人仲間の助けです。吉本興業の方が会社の垣根を飛び越えて声をかけてくれますし、東京芸人代表格ナイツさんはイベントに呼んでくれます。事務所を借りたら、サンドウィッチマンさんが不要になったデスクをプレゼントしてくれました。同業者がライバルというより、同じ苦労を知る同志として扱ってくれることが、ありがたいなあと思います。 しかし個人事務所だと、被害妄想かもしれませんが、なめられることは多々あります。自虐ネタにもしていますが、大手事務所だと楽屋と弁当があるのに、ぼくらは着替える場所さえないこともある。収録が深夜になっても交通費なしとか。致命的なのは、いまも直面しているギャラの未払い。スポンサーが倒産してお金が支払えないという連絡がきたのに、いろいろ調べると大手事務所所属の共演者には支払われているケースもあります。結局、弱小のところは後回しなのかなと思うと、眠れないくらい腹立たしくなりますね。うちに未払いのままのプロデューサーが、そのまま業界で仕事を続けていてもお咎めはない。狭い社会ですし、これまでぼくらもいろいろありましたから、我慢しなければならないことがやっぱり多いですね。 ――そんな苦労を抱える個人事務所ですが、今後はどうしたいという考えはありますか。 森田さん: いろんなことがあって思うのは、ファンの大切さです。ファンは、実はぼくらを支えてくれる株主のようなものなんです。限定ライブを「株主総会」と称して、毎年度の「芸能事務所 ザ・森東」の収入を公開していますし、ファンは業績のアップダウンをドキュメンタリー感覚で見てくれている。最初は年間収入200万円だったのが、いま数千万円まで稼げるようになったのも、ほんとにファンのおかげです。けれどおんぶにだっこというわけにはいかないので、コロナで営業が激減したのを補填するため、YouTubeやグッズ販売を行うなど無い知恵を絞って、営業努力は続けています。テレビ出演はプロモーションの意味合いもあり、そこは戦略といえるかもしれません。そうやって自分たちが考えたことを試行錯誤できるのも、小さな個人経営だからこそ。みんな驚かれるんですけど、ぼくらは収支にしろ、すべてをガラス張りにしています。なにがええんや、なにがあかんのかも、はっきりできますし、そして、やればやっただけ返ってくる。これはやりがいになりますね。 ――最後に今後の抱負をお願いします。 森田さん: 会社経営とか難しいことを考えていたわけじゃなく、成り行きでこうなって、いまがあるわけですよね。風が吹けばフッと飛ばされるホコリのような存在です。じゃあ何が言えますかというと、とにかく、必死ということ。頭がいいわけでもないんだから、なりふり構わず、必死でやっていくしかない。ネタを書いて、コントや漫才をやって、お笑いを追求するのが本職ですが、手作りではじめた会社のなかで、あらたな可能性が見つかるかもしれません。いろんなことをやってみようと。ですから、非力で小さいながらも、今後もがんばっていきたいと思います。