映画初主演の関哲汰「一つの作品の影響力というものを強く感じているところです。人生を変えられました」
ダンス&ボーカルユニット・ONE N' ONLY(通称ワンエン)のメインボーカルとしても活躍する関哲汰が、格闘アクションムービー「100秒の拳王 -ケンカバトルロワイアル-」(9月6日公開)で初主演を務める。「ケンカバトルロワイアル」とは、2022年からYouTubeを中心に前代未聞のブームを巻き起こしている素人によるケンカファイト。本作はチャンネル登録者数18万人を誇る格闘家・バン仲村が主宰する「ケンカバトルロワイアル」の全面協力を受けて、また、各界のバラエティー豊かな豪華キャストを迎えて制作が実現した。満たされない者同士が拳でぶつかり合う「ケンカバトルロワイアル」に自らの存在証明を懸けて挑む孤独な男・鷲田隆を演じた関。その感想や撮影秘話を聞いた。 【写真】ONE N' ONLY関哲汰のクール&キュートな撮りおろし写真全11枚 ■今作に出会って「強い男になりたい」という考えに変わっちゃいました ――本作で主演を務めると聞いたときはいかがでしたか? 僕、もともと「ケンカバトルロワイアル」の動画コンテンツが好きでよく見ていたんです。今作にも出演されているバン仲村さんや舞杞維沙耶さんのことも知っていて好きだったので、共演できるというのがまずうれしかったです。うちのメンバーのEIKUとREIも格闘技が好きで、一緒に「ケンカバトルロワイアル」を見たりしていたので決まったときは自慢しました(笑)。そしたら「マジ? めっちゃいいじゃん!」って。僕の父親も格闘技が好きなのですごく喜んでくれました。 ――本作は激しいアクションシーンも多いですよね。不安はなかったですか? アクションはあまり経験したことがなかったのですが、それよりも単独初主演ということと、普段の自分とは全然違う役という部分の方が不安は大きかったです。本当に、自分とのギャップがすごすぎて…。別人です(笑)。 ――クランクインまでに準備したことはありましたか? 撮影は(2023年の)7、8月の夏で、それまでに筋トレとアクションシーンの練習を重ねました。K-1の元世界チャンピオンのHIROYAさんのジムに通って、いろいろ教えてもらいました。 ――現在もたくましい肉体をキープされていますが、筋トレはこの作品を機に始めたんですか? はい! この作品がきっかけで目覚めました。それまでは割と体が細かったんですけど、今作に出会って「強い男になりたい」という考えに変わっちゃいました(笑)。僕が現場でずっと筋トレをしているので、メンバーにもそれがうつっちゃって。EIKUとNAOYAの2人がやっていますね。EIKUはもともと筋肉質ではあるんですけど、僕が買った器具を真似して買って、よく一緒にやっています。 ――哲汰さんの筋トレのメニューというと? クランクイン前は朝夜の1日2回で、1回20分ぐらい。YouTubeのトレーニング動画を見ながら、主に前腕や上腕二頭筋、大胸筋を鍛える感じでした。 ――映画の制作サイドから「体を大きくしてほしい」というオーダーもあったのでしょうか? いや、そういうことは言われなかったんですけど、劇中で対戦する方は皆さん体が大きいので。並んだときに僕がひょろひょろして弱そうだったらちょっとどうなんだろうと(笑)。お話をいただいてからクランクインまで1ヵ月ほどしかなかったんですけど、ちょっとでも強く見せたいと思って頑張りました。筋トレして食べまくって…っていうのをできるだけ毎日やりました。 ――1ヵ月でどのぐらい変化がありましたか? 体重は4kg増えました。筋肉量で増やしましたね。猛烈に自分を追い込みました。 ■普段の僕はすごくしゃべるし、何ならうるさいんです(笑)。そんな自分をちょっと封印して、撮影の合間もなるべく1人でいる時間を増やしていました ――今作で哲汰さんが演じるのは、戸籍を持たず、ケンカ最強の称号「拳王」の座を手に入れようと奮闘する鷲田隆です。そのキャラクター性の役作りに関して「不安だった」と先ほどおっしゃいましたが、どのように進めていったのですか? 鷲田が映画の中で食べたり飲んだりするものをまずは取り入れました。普段食べない魚肉ソーセージを毎日食べたり、飲めないブラックコーヒーを注文したり。自分が普段しないことをすることで、そのにおいとかを感じて役に少しでも入り込めたらなって。あとは台本に描かれていない過去のバックボーンも想像して作り上げて、自分なりにキャラクターをより固めていきました。趣味は○○だ、とか。 ――なるほど。ちなみに哲汰さんがイメージした鷲田の趣味とは? 趣味というか、「意外とペットが好き」みたいな(笑)。腕っぷしが強いだけだと人として奥行きがあまりないように感じて。意外とかわいいとか、実は優しいところもあるんだっていうギャップもあるといいなって。それが直接生かせるシーンはなかったですけど、どこかしらに滲み出ていたらいいなと思います(笑)。あとビジュアルの部分で言うと、髪はあえて染めずに“プリン状態”のまま臨みました。ちょうど伸びて黒い部分が見えていたんですけど、鷲田はお金がなくて頻繁に染められないっていうところがその部分から伝わるといいなと思って。バンテージの巻き方も初めて習って、本番までにひたすら家で練習しました。 ――鷲田は劇中でほぼ笑顔を見せることのない、かなり陰のあるキャラクターだと思います。その辺りは演じてみていかがでしたか? さっきもお話したように、普段の僕はすごくしゃべるし、何ならうるさいんです(笑)。そんな自分をちょっと封印して、撮影の合間もなるべく1人でいる時間を増やしていました。人としゃべると、どうしても気持ちがそのときの話題に引っ張られたりするので…。自分のことは1回忘れて、鷲田になりきってやっていました。僕は演技経験が浅いので、撮影の前にパッとスイッチを入れるみたいなことがまだ難しいんです。徐々に作り上げるやり方のほうが合っていたし、やりやすかったです。 ――そういう現場の居方も、普段、グループでいるときとは真逆ですよね。 はい。ワンエンのときの僕とは全然違ったと思います。やたら端の方に行ったり、わざと人のいない場所を選んでいましたから。孤独にずっと一点を見つめたりしていたので「この子、大丈夫か?」って思われてたかもしれない(笑)。 ■監督に「おまえ、ちょっと泣きすぎだよ」って言われちゃいました(笑) ――映画の撮影期間中にワンエンのメンバーから雰囲気の違いを指摘されることはありましたか? それはなかったです。メンバーといると楽しくなって普段の姿に戻っちゃうので。やっぱり、安心感がすごいんですよね。ただ、パフォーマンスのときはたまに鷲田が出ていたかも。ライブのとき「YOUNG BLOOD」とか、「倒すぞ!」みたいなオラオラした表情でやっていました(笑)。 ――鷲田と哲汰さんは完全に真逆だと思いますが、そんな中でも鷲田の言動で「ここは理解できるな」という部分はありましたか? 仲間想いなところですかね。鷲田って、ああ見えて何だかんだ周りの人たちを大事にするんです。ちょっとしたセリフに彼の優しさが見えるというか。僕もメンバーのことをいつも大切に想っているので、そこはすごく理解できるし、共通点かなって思います。 ――撮影で印象的だったシーンのエピソードはありますか? やっぱりアクションシーンです。自分より体格の大きい方々と向かい合うときはどこか怖い部分があるんですけど、それでも「自分が一番強い」というメンタルでいかなきゃいけなくて。あとは、実際にアクションの動きを当てなきゃいけないときが大変でしたね。相手が本物の格闘家さんだったりするとそれがOKだったんですけど、普段そんな、ケンカとかしないじゃないですか?(笑) 僕の側に「当てる恐怖心」みたいなのがまずあって、それを払拭するために自分の気持ちを押し殺すっていうことに苦戦しました。 ――お芝居とはいえ、本当に当てるのは勇気がいりますよね。 そうなんです。でも今回、監督がすごく熱血でガタイのいい方で。なかなかいけない僕に対して「俺の腹を殴っていいよ」って本番前に言ってくれて、それで気合いを入れたりしてました。 ――そこでまず慣らして本番に挑んでいたんですね。 はい。監督に「まだ足んねーよ!」とか煽られて(笑)。本番に入ってしまえばアドレナリンが出ているので大丈夫なんですけど、やっぱりね、人を殴るっていうのはすごく申し訳ない気分でした(笑)。 ――ケガを負ったシーンは大量の血の演出が生々しかったです。やってみていかがでしたか? うーん、なかなかのものがありましたね(笑)。メイク中は、目の前でどんどん自分が“傷付いていく”のを見るっていうのも慣れなくて。手の傷のメイクとかもめちゃくちゃリアルだなって思いました。 ――現場で他の方と話す機会はあまりなかったとのことですが、個性豊かな共演者の皆さんとのシーンはいかがでしたか? 福島さん(善成/ガリットチュウ)とのシーンは、福島さんが演じるキャラクターが怖過ぎました。トラウマになるくらい(笑)。福島さん自身はとても優しい方で、先日、たまたま街でお会いして話し掛けたらめちゃくちゃ気さくに話してくださいました。板尾(創路)さんとの最後のシーンもかなり印象に残っています。板尾さんが演じるキャラクターがラスボス的な存在だったので、今までの鷲田としての感情を思い出しながら板尾さんの顔を見たときに自然と涙があふれて。あそこは一番自然に演技ができたシーンかもしれないです。 ――完全に感情移入していたんですね。 はい。僕、泣きすぎて休憩中も嗚咽するぐらいで。監督に「おまえ、ちょっと泣きすぎだよ」って言われちゃいました(笑)。 ――ネタバレになるので詳細は触れませんが、ストーリーのラストはちょっと気になる終わり方ですよね。どう解釈しました? 何か、続編があるのかなって。監督に聞いたら「そういうわけじゃない」って言われたんですけど、確かに続きが気になりますよね。それぞれの解釈に委ねるって感じだと思うんですけど、個人的にはその先の世界も見たいです。 ■ワンエンのTETTAを1回忘れて、俳優・関哲汰としてのお芝居を見てほしいです ――今後、役者として挑戦したい役はありますか? それこそ今回の鷲田が、僕のずっとやりたかった役なんです。なのでめっちゃうれしかったんですけど、それ以外で言うとしたらヒール役。サイコパスみたいなぶっ飛んだ役もいいな。目がイッちゃってて感情をどこかに置いてきたみたいな。 ――「演じること」は楽しいですか? 楽しいです。普段の自分じゃない人間になれるので。この作品の撮影が終わって1年が経つんですけど、そこからずっと筋トレを続けていて、一つの作品の影響力というのも今は強く感じているところです。人生を変えられましたね。 ――究極の「強い男」が描かれる今作ですが、哲汰さんの周りでそれに当てはまる人は誰でしょうか? メンタル的なことも含めて言うとEIKUです。体力があって弱音も吐かないし、メンバーの中で一番男っぽいと僕は思います。僕はタイプ的にEIKUとめっちゃ合うんですよ。くだらないことでケンカしても、アイツもずるずる引きずりたくないタイプだからその場でヒートアップして今日でもう解決するみたいな。しかも、自然と…なんですよね。家族みたいな感じです。 ――「夢」も一つのテーマになっていると思いますが、哲汰さんの昔の夢は何でしたか? 中学生の頃は芸人さんになりたかったです。あれだけしゃべりが上手で面白くて、人を笑顔にできるって最高だなって。ヒーローだなと思っていました。昔からバラエティーが好きだったんですよ。お父さんとお母さんがそもそも好きで、家ではいつもそういう番組がテレビでついてました。高校生になるとアーティストがカッコいいなと思いました。AAAさんが好きで憧れて。AAAさんは僕がこのお仕事を目指すことになった原点です。 ――今作には、ワンエンの楽曲「Fight or Die」が挿入歌として起用されています。こちらはどんな楽曲ですか? タイトル通り、戦うか死ぬか…みたいな。この映画に合わせて作られた曲で、すごく情熱的なナンバーになっていると思います。音源としてのリリースはこれからなので、ぜひ楽しみにしていてほしいです。 ――最後に、この映画をどんなふうに楽しんでほしいですか? ワンエンのTETTAを1回忘れて、俳優・関哲汰としてのお芝居を見てほしいです。ナチュラルにフラットに、鷲田という1人の男を演じる姿を楽しんでいただけたらうれしいです。 ■撮影=諸井純二/取材・文=川倉由起子/スタイリスト=Masumi Yakuzawa(TRON)/ヘア&メーク=Emiy (Three Gateee LLC.)/衣装協力=COACH、VALAADO、THE ONITSUKA