そもそも3バックと4バックは何が違うのか。メリット、デメリットを考える。最大の強敵と戦う10月に日本はどちらを選択すべき?
過去2大会の最終予選で敵地サウジ戦はいずれも敗戦
ただ、これは落とし穴もある。中国戦は3-2-5で押し切ったが、バーレーン戦は相手の分析と抵抗があり、3-2-5のままでは手詰まり感があった。ここが難点だ。3バック系は最初から効果的なスペースに立っているので、動く必要がなく、パターンが硬直しやすい。しばらく攻めあぐねた後、30分頃から日本の選手たちはポジションを大きく変え、特に守田英正が6人目でライン間へ潜ったアクションをきっかけに、攻略に至った。 3バック系が安定感故に流動性を失い、硬直状態に陥ることは、守備でも起こり得る。5バックに変形して構えた後、下がりっぱなしになる現象がそれだ。安定的に構えた状態なので、バランスを崩して前へ出づらい。3バックで起こりやすい課題のナンバーワンと言えるが、今は対戦相手の力量もあり、顕在化していない。 一長一短のある3バックと4バック。どちらを選択するべきかは、選手の適性、対戦相手やゲームプランによるだろう。 たとえば、カタールW杯や親善試合で対戦したドイツは、対5バックを苦手にしていた。彼らはポゼッションしつつも、ダイレクトなロングボールで一気に背後を突いたり、速い縦パスを突き刺したりと、ゴールへ直線的に進む攻撃が得意なチームだった。そのため相手に5バックでスペースを消され、ドイツのスピードを殺すべく構えられると、攻撃の迫力を失った。ドイツの長所を抑えるうえで、5バックは有効な選択肢だった。 こうした対戦相手の特徴、ゲームプランの視点で言えば、10月のサウジアラビア戦、オーストラリア戦はどうか。 日本は過去2大会の最終予選で、アウェーのサウジアラビア戦はいずれも0-1で敗れており、最大の難所と言える。アウェーの大声援があるだけに、日本が3バックでスタートした場合、5バック化して押し込まれる時間が長くなるかもしれない。また、アグレッシブに挑んで来る相手だけに、中国戦やバーレーン戦のように日本が押し込み続けるペースコントロールも簡単ではない。そこに挑戦しない場合は、4バックで全体のバランスを均質にし、トランジションに勝機を見出すほうがベターだ。それは日本の長所でもある。 一方、オーストラリアは突然の監督交代により、読みづらいチームになった。とはいえ、選手の質は以前よりも下がっており、ボールはある程度回せるが、攻撃に脅威はない。現在、一番フィットしている3バックで攻守をコントロールすれば、地力勝ちするだろう。 このように3バックと4バックを両方持ち、ゲームプランに合わせて選択できればいい。ただし、今の日本の流れを踏まえると、アジアのトップチームとして相手もアウェーも関係なく、今一番やりやすいシステムで2試合にぶつかるのもあり。その場合、3バックの課題も見えてくるだろう。 取材・文●清水英斗(サッカーライター)