”熱男”松田宣浩が語るプレミア12優勝の真実「チームでスタメンを外れたときの感情と違った。日の丸の責任は重かった」
優勝への道のりは決して楽なものではなかった。 稲葉監督からは「先手を取ること」を口酸っぱくいわれたが、常に後手を踏んだ。 「メジャーリーガーは来ていないが、全体的にレベルが上がっていると感じた。韓国の選手は体も大きいし、1番から9番まで凄い選手が揃っていた」 侍ジャパン打線は調子が上向かずに苦しんだ。 坂本、山田、丸佳浩(巨人)らも適応できずにスタメンを外れ、レギュラーシーズンで一度もなかったバントのサインが丸に送られた場面もあった。 「相手投手の球自体は、決して速くはないのに捉えられなかった。対戦経験のない、外国人の特に左投手の独特フォームと動くボール。みんなと話していたのは、日本では、先発投手を3回打てるが、今回の大会からは、どの国も投手交代が早く、1打席、1打席、全員が違うピッチャーだったということ。僕も20打席が違うピッチャーだった。その対応に難しさがあった」 スタッフが用意してくれたデータは完璧だった。対戦する可能性のある投手の全球種、左、右打者に対する映像がまとめてあった。 「その映像情報を実際の打席情報と重ね合わせる作業がうまくいかなかった」 稲葉監督からは「どんどん後ろに状況を伝えてくれ」と相手投手の情報の伝達、共有を徹底するように命じられた。凡退したバッターは、必ず次打者に感じた情報を伝えた。 金子誠打撃コーチからは「初球から行くバッターと、見るバッターに分かれるが、見ていたら終わってしまう。ファーストストライクから。初球からスイングできる準備はかけていこう」とのアドバイスが飛んだ。 「ストライクイコール打つ球が国際大会。9個のマスに入るボールはすべて打てる球。それくらいアバウトな感覚で、ファーストストライクを打っていかねばならないことはわかっていた。ボールは動く前に打つのが鉄則。ボールが動く量と幅、感じる重さは体に近い方が増幅する。だからポイントは前の方がいい。途中、強く打ちたいので、オープンだった構えをスクェアにするなど対応はしてみたがうまくいかなかった。勇人もタイミングが合わず苦労していた。でも、勇人のあれだけの練習量を見ると最後に結果を出すと信じていたが」 またボールも飛ばなかったという。 「ボールは少し小さく感じて投げやすかったのだが、飛ばないボールだった。コースについても左投手も右投手もインサイドよりも外に流すピッチャーが多かった。その傾向を読み、逆らわず素直に流して結果につなげたのが浅村栄斗(楽天)。コンパクトなスイングを心がけて結果を出した。誠也も早い段階から打席でしっかりと対応して好調をキープした。大きな国際大会は、これが4大会目だが、対応力が問われるのが国際試合だと改めて思い知らされた」 問題を克服した選手がポイントとなり不調の選手をカバーしたのも今大会の特徴だった。そのように運んだ稲葉監督のマネジメント力も光った。 優勝の一夜明け会見で稲葉監督は「マッチ(松田)を呼んで本当に良かった。1人で声を出して盛り上げてくれた。(決勝のスタメン外しも)私の中で外していいのか、選手はどう思うのか、という色々な思いもあったのだが」と松田の姿を賞賛した。 「光栄です。もし世界一になっていなかったら名前を上げてもらえなかったと思う。国際試合は、個々の力だけじゃ勝てない。スーパースターが集まって、それぞれが与えられた打順でやるだけじゃ勝てない。モチベーションを上げたり元気を出すのがいないとダメだと痛感した。チームの主力にエースが揃っている。そういう人ら全員をフィールドに出ている9人と同じく戦っている感をベンチで出したかった。スタメンを外れ、ベンチで腕を組んでいて、出番を待って“呼ばれたら行きますよ“の態度でいるなら日の丸を背負う意味がない。自分も打席に入っている、自分も守っているつもりで、みんなでやっている雰囲気を全員が作るべきだと思った」