歌舞伎の大先輩から受け継ぐ〝鬼平の歴史〟名を刻む松本幸四郎・市川染五郎〝父子の宿命〟最新劇場版「鬼平犯科帳 血闘」
人気時代劇シリーズの最新劇場版「鬼平犯科帳 血闘」が全国で公開中だ。五代目鬼平に抜擢された松本幸四郎は「日本が世界に誇れる時代劇です」と自信を見せ、若き日の鬼平役に挑んだ幸四郎の長男、市川染五郎は「〝父の挑戦〟に参加させてもらえてうれしかった」と語る。〝親子共演〟の製作秘話を聞いた。 池波正太郎生誕100年記念として、ドラマ版と劇場版が製作され、映画館とテレビ放送で展開中のビッグプロジェクト。 「祖父(初代松本白鸚)や叔父(二代目中村吉右衛門)が演じた鬼平を継ぐというプレッシャーは大きかったですが、それだけに演じがいのある役でした」と幸四郎。 染五郎は「改めてこんなに面白い時代劇だったのかと知らされました。ただ、若い頃の鬼平を描いた作品はないので、役作りは難しかったです」と素直に吐露した。 若い頃に世話になった居酒屋の娘、おまさ(中村ゆり)から密偵になりたいと告げられた長谷川平蔵(幸四郎)はこの願いを退ける。だが独断で動くおまさは絶体絶命の危機に陥り…。 叔父と共演経験のある幸四郎は「楽屋にいる叔父はすでに鬼平そのものでした」と振り返る。それを受け継ぎ、長男が若き鬼平を演じることに「運命でしょうか…」と感慨深げにつぶやいた。 クライマックスの殺陣も圧巻。「殺陣にはこだわり特訓もしました。リアルさとエンターテインメントを融合した殺陣とは何か? それを考えながら一手一手に意味を込め刀を振っています」 歌舞伎の大先輩が連綿と受け継ぐ鬼平の系譜に名を連ねた染五郎は「この役に強い愛着を感じ、できればまた演じたい」と〝続投〟を志願した。 「もっと早く鬼平犯科帳を見ておくべきでしたね」と染五郎が反省すると、「今でも遅くはない。だって5年前なら親子共演もできていないですから」と幸四郎が優しく語りかける表情がうれしそうだった。 新たな〝鬼平の歴史〟に名を刻みつけた幸四郎と染五郎。これはやはり宿命なのだ。 (波多野康雅)