若者に広がる「論破文化」、Z世代芸人らの漫才ネタにも波及 平均年齢51歳の審査員を圧倒
■ 25歳の「暴論」、審査員や観客を翻弄
結成4年目のコンビ、空前メテオ(茶屋、大門正尚)が優勝を飾った『第13回ytv漫才新人賞決定戦』(3月3日放送/読売テレビ)。同大会を見てクローズアップしたい点は、空前メテオら若手勢が披露した「偏った意見のネタ」のおもしろさである。(文/田辺ユウキ) 【写真】同じくZ世代で人気上昇中! 同大会唯一の女性コンビ 空前メテオがファーストラウンドで披露したのは、ボケの茶屋が、成長するにしたがってメスからオスへと性別が変わる「魚」と、幼少期は女子の憧れの職業として挙げられるのに実際は男性が多いとする「パティシエ」の世界を重ね合わせ、「パティシエ=魚」と持論を展開するネタ。不条理で埋めつくされた「茶屋ワールド」に、ツッコミ役の大門だけではなく、審査員、観客も翻弄され、同ラウンドをトップで通過。茶屋はネタ後「最高のパズルができました」とアーティスティックな感想を口にした。 決勝ラウンドでも茶屋の「暴論」が炸裂。犬にはさまざまな犬種があるが、猫は痩せているか太っているかしかないなどと言い、観る者の混乱笑いを誘った。ここでも茶屋は最後、自分たちの漫才について「最高のダンスでした」と充実の表情を浮かべた。
■ 審査員のフット岩尾「2組とも偏った意見」
空前メテオと優勝を争った同期のぐろうも、ファーストラウンドのネタではボケの家村涼太が「永久脱毛にはメリットがない」と言い切り、決勝ラウンドでも「結婚式でおこなわれることはすべて茶番」と独自の見解で話を進めていった。 審査員の岩尾望(フットボールアワー)が「2組とも偏った意見。よりスッと(ネタが)入ってきたのが空前メテオ」と評したのは、今大会を象徴する審査評だったのではないか。 そもそも漫才のネタのほとんどは、ボケ役が偏った考え方で話を推し進めるものである。そしてツッコミ役は、観る者の側に立つためにボケ役に対して異論を唱えていく。そうすることでボケ役がいかにおかしい人間であるかや、その無茶苦茶な話はあくまで笑わせるためのネタであることを示していく。 ただ空前メテオのボケ役・茶屋、ぐろうのボケ役・家村は、ツッコミ役の反論を聞き入れる素振りを一切見せない。ひたすら自分の偏った考え方をゴリ押ししていくのだ。これは結成5年目で今大会に進出したハイツ友の会(7位)にも感じられることで、清水、西野は喫煙者と飲酒者に関する偏見を次々と口にする。同コンビの話には明確なボケ役、ツッコミ役がないため2人の意見も対立せず、「反論の余地なし」で展開していった。