若者に広がる「論破文化」、Z世代芸人らの漫才ネタにも波及 平均年齢51歳の審査員を圧倒
■ 相手を言い負かす「論破文化」の影響も?
岩尾が評する「偏った意見」を若手コンビたちがネタのスタイルとして取り入れている背景のひとつには、ここ数年、カルチャー化した「論破文化」が影響しているのかもしれない。論破とは、自分の考えが暴論、屁理屈、逆張り、不条理だったとしてもその「正しさを証明すること」以上に、「相手を言い負かすこと」におもしろみを見出し、詭弁に陥りそうになると論理のすり替えをおこなうなどし、ゲーム的に勝利を目指していくものだ。 空前メテオ、ぐろうのネタからは、今やひとつの芸事となった「過剰なディベート」がモチーフになっているようにも思える。ちなみに予選会・事前ROUND2(11月5日放送)でも、空前メテオのネタについて審査員の久保田かずのぶ(とろサーモン)が「居酒屋で論破対決してみたい」とコメントしていたので、やはり「論破文化」と無縁ではないだろう。 例えば、芸歴10年目のラストイヤーで『ytv』に挑んだバッテリィズは、アホのエースに寺家がおすすめの世界遺産を教えるが納得してもらえないというネタだが、こちらは話としてラリーがあった。同じく10年目のドーナツ・ピーナツも、ワイドショーのコメンテーター役のドーナツを、司会者役などのピーナツがメチャクチャな進行で困らせていくが、こちらもドーナツには反論の余地が用意されている。バッテリィズ、ドーナツ・ピーナツは2人のやりとりで成り立っていく内容だった。 ただ空前メテオとぐろうは、とにかくボケ役がツッコミ役の反論を封じ、なんなら相手を上回ることに躍起になっていく。空前メテオに至ってはもはや、茶屋の耳に大門の反論が届かない風でもあった。その様子はまるで、政治や経済の問題を朝まで激論する某生番組の出演者のようだ。両コンビにとっては、ツッコミ役の定番の締め言葉「もうええわ」も、話に収まりがつかなくなったので強制終了させるための合図に感じるのがおもしろいところ。 ともあれ今回の王者・空前メテオ、準優勝・ぐろうからそういった昨今の「論破文化」がチラついたのは、それだけ両組の話に圧倒されたということである。 ◇ 『第13回ytv漫才新人賞決定戦』の模様は、TVerで見逃し配信中。