【ふくしま創生】青光塗よみがえれ 会津漆器×研究の力 福島県ハイテクプラザ研究員・吾子さん「新たな価値創出を」
あでやかな深緑をまとう会津漆器「青光塗(せいこうぬり)」が研究の力でよみがえろうとしている。福島県ハイテクプラザ会津若松技術支援センター(会津若松市)が現代で入手可能な材料で代用し、漆の色合いや質感を精緻に近づけ、地元の職人にノウハウを還元する。現在、材料の配合具合や環境による色の変化を研究しており、来年には試作品を仕上げる予定。中心となっている副主任研究員の吾子(あこ)可苗さん(44)は「会津漆器に新たな価値を見いだし、魅力ある商品提案につなげたい」と意義を語る。 江戸後期から明治、大正にかけ、深く渋みのある緑色が特徴の青漆(せいしつ)製品が生み出され、会津地方では青漆を塗った漆器を青光塗と呼んだ。色合いの美しさはもちろん、朱と蒔絵(まきえ)との相性の良さから加飾技法にも取り入れられ、会津漆器に色彩の幅と華やかさをもたらした。 ただ、材料の入手の難しさや、漆器主流の黒や朱を好むニーズが多かったことから製作が衰退し、職人の間で作業工程も受け継がれないまま、いつしか技術が途絶したとされる。
吾子さんは、県立博物館(会津若松市)や奥会津博物館(南会津町)での聞き取りや文献などを調べた結果、会津地方で青漆の材料に使われていたのは、会津木綿の藍染め用の藍と顔料の石黄を漆に混合したものだと突き止めた。ただ、当時と同じ材料を入手するのは難しかったため、自ら藍液を精製した。かき混ぜる工程で出る泡「藍の華」を乾燥、粉状にしたものが適していることを見つけた。石黄は代わりとなる顔料を5種類に絞った。 今年度は藍の華と石黄の代用顔料を漆に混ぜたものを固まらせる「硬化」の過程で、どのように色が変わるのかを調べている。気温や湿度、紫外線などの条件下で発色に影響が生じるかも確かめる。 県立博物館には、青漆が施された小皿やおわんなどが多く所蔵されているが、常設で展示はしていない。市民らが普段から目にする機会は乏しい。 会津漆器協同組合理事長の高瀬淳さん(72)は「完成しないと分からない未知の部分はあるが、多くの人に受け入れられれば会津漆器の発展にもつながる」と期待している。