トヨタが港湾物流の効率化を支援 名古屋港・博多港から拡大目指す
トヨタ自動車は、港湾地区のコンテナ物流効率化を支援する「One Stream」(以下ワンストリーム)を拡大している。港湾のドレージ(海上コンテナ陸送)と倉庫の情報連携により配車の最適化や倉庫の荷役効率化を提案しており、コンテナ輸送の取扱量は累計約4万5000本に達した。今後は対象港を名古屋、博多に加えて他の5大港にも広げるとともに、CY(コンテナヤード)との情報連携も目指す。 ワンストリームは輸送と倉庫、荷主のコンテナ情報を共有化し、輸送、倉庫の各工程の同期化により業務の効率化や労働負荷軽減につなげるサービス。高性能なGPS(全地球測位システム)を使ったリアルタイムの自動配車支援を軸に輸送会社、倉庫会社、荷主企業に提供している。昨年、サービスとして立ち上げた。 導入により、ドライバー1人が1日に運ぶコンテナ本数が2倍近くに伸びた例もある。ドライバーの集配先の倉庫での滞在時間を4割近く削減し、その分運転に充てられるようにした。 一般トラックの配車支援システムは配車の計画策定が主なのに対し、実際の現場の状況に応じて都度配車する。2020年から名古屋港で実証を重ね、現場の実情に合わせたさまざまなノウハウを反映させた。 仕組みはこうだ。スマートフォン(スマホ)などの端末により、各ドライバーとトラックの位置情報、作業の進捗(しんちょく)を把握する。そのデータに輸送のオーダー情報、コンテナ情報、倉庫情報、法令による制約などを組み合わせ、システムが最適な配車を算出し指示を出す。倉庫側には車両の到着予測を提供する。 配車の精度は高いという。車両タイプや機材、ドライバーの就業予定などの輸送情報、コンテナの到着時間指定やサイズ、シャーシ条件といったコンテナ情報、倉庫の作業進捗や作業順位、キャパシティーなどの倉庫情報に加え、ターミナルゲート前の混雑状況などまで詳細な条件を考慮する。 配車の最適化ばかりでなく、輸送会社と倉庫会社はワンストリームを通じて相互に作業の進捗を共有することでタイムリーな貨物搬出入が可能になり、作業をスムーズに進められる。 スマホなどで撮影した写真のクラウド管理・共有機能の利便性も高い。OCR(光学文字認識)によりコンテナに記載されているコンテナ番号やシール番号などをデータ化し、帳票に展開可能。各コンテナの荷役写真もブッキング情報とひも付けて管理でき、輸送・荷役の進捗と併せて荷主とも共有できる。 ワンストリームによるOCRと情報伝達のデジタル化により、倉庫会社の搬入票の作成工数を2割減、荷役写真の管理工数を7割削減することも可能だという。 ■CYとも連携目指す トヨタ自動車新事業企画部でワンストリーム代表を務める足立聡史氏は「これまで個社が持っていた情報を共有し連携することで、関係者皆にメリットが生まれる」と強調する。導入企業は名古屋港と博多港の港運事業者がメインだが、効果が認知され、輸送会社、倉庫会社が協力して導入を図る動きも広がってきたという。 ワンストリームは20年、トヨタ自動車の新規事業創出プログラムから始まった。車両開発に携わっていた足立氏が宅配危機から物流に興味を持ったのがきっかけだ。現場のヒアリングも含めて物流を徹底的に調べ、「ラストマイル領域では多くのソリューションがあるのに対し、港とコンテナ物流の領域では個社でアナログな方法により時間をかけて業務を行うなど日々物流を維持するために戦っている」と危機感を抱いた。 足立氏は「物流の『2024年問題』をはじめ人手不足が深刻化する中、日本のサプライチェーンを維持するためにコンテナ物流を持続可能なものにしたい。何よりも、港を元気にしていきたい」とも話す。 ワンストリームに集まるデータが充実すればその分、全体として効率化効果が上がる。点から線へ、さらに面展開を目指す。そのために必要なピースの一つが、CYの情報だ。TOS(ターミナルオペレーションシステム)との連携に向け、広く関係者に働き掛けていく方針。
日本海事新聞社