中東の危機拡大は阻止できるのか うごめく「抵抗の枢軸」 本気で参戦なら戦闘拡大?
イスラム組織ハマスと戦闘を続けるイスラエルは、「抵抗の枢軸」と呼ばれる中東各地の武装組織にも悩まされている。アメリカやイスラエルの“侵略”を防ぐという共通の目的で結束しているヒズボラ、フーシ派、イスラム聖戦などに囲まれ、四面楚歌の状態に――。彼らが本気で参戦してきた場合、中東各地に戦闘が拡大する恐れもある。 【画像】イスラエル軍がシリア空爆、イラン革命防衛隊の幹部死亡~イラン国営メディア 今後の戦局を左右する「抵抗の枢軸」と、その黒幕イランの思惑をひもとく。
■「“彼ら”が本気を出したら、やばい」
2023年10月、ハマスとイスラエルの衝突が始まった直後のイスラエルで、ユダヤ人に話を聞くと異口同音に言っていたことがある。 「“彼ら”が本気を出したら、やばい。こんなものではすまされない」 "彼ら”とは、北部で国境を接するレバノンが抱えるイスラム教シーア派の武装組織「ヒズボラ」のことだ。レバノン国内では合法政党としても活動しているが、イスラエルとハマスの衝突が始まった10月7日以降、イスラエル領内への攻撃を続けている。 ヒズボラは最大で4万5000人の戦闘員を有するといわれ、イスラエルがハマス以上に恐れる存在だ。新型の無人機や高度な精密誘導ミサイルなどの最新兵器を持っていて、ハマスをはるかに上回る戦闘能力があるとされる。 対戦車砲や無人機でイスラエル北部を攻撃する以外にも、イラクやシリアのアメリカ軍の拠点にも相次いで攻撃をしかけていて、ヒズボラの指導者ナスララ師は「攻撃をやめさせる唯一の方法は、パレスチナ自治区ガザ地区での戦争を止めることだ」と主張した。 今のところ、イスラエルもヒズボラも全面戦争を望んでいるわけではないようだが、偶発的な衝突から戦闘がエスカレートしていく危険性は常にある。
■フーシ派「侵略終わるまで攻撃する」
もう1つ、イエメンの反政府武装組織「フーシ派」も、ガザ地区から2000キロ以上離れたイエメンからミサイルや無人機でイスラエルを攻撃している。 フーシ派も「イスラエルの侵略が終わるまで攻撃する」と宣言していて、紅海で日本郵船が運航する貨物船を乗っ取ったことも記憶に新しい。船を所有するイギリス企業の株主にイスラエル人の富豪が含まれていることで狙われたとみられる。 フーシ派はハマスを支持していて、今後も、イスラエルの港に向かうすべての船の航行を阻止する、と主張している。紅海は日本にとっても、重要なエネルギーの輸送路だ。海運の安全が脅かされると、世界経済にも暗い影を落とすことになる。