祖国へ帰る人、日本に残る人――ウクライナ避難民それぞれの思い。いまできる支援とは?
言葉の壁に阻まれ、進まない就労のマッチング
日本財団の「ウクライナ避難民支援」の事業を担当している、神谷圭市(かみや・けいいち)さんに現況を伺いました。 ――日本財団が支援してきたウクライナ避難民の現状について教えてください。 神谷さん(以下、敬称略):日本財団は当初から3年程度という中長期的な支援を想定し、2022~2024年度と3年をかけてウクライナ避難民の受け入れ、自立・活躍をサポートしています。 2024年6月現在での生活費支援の実施数はおよそ2,000人になりました。現在は「緊急支援」から「定住支援」のフェーズに変化しています。 私たちは、避難民が日本社会で安心して生活し、地域社会で活躍できるよう支援することを目指してきましたが、出入国在留管理庁のデータによると、日本に入国した避難民のうち約2割が帰国・出国していることが分かっています。 そこで日本財団では、避難民個別の事情に応じて、ウクライナ本国や第三国(ポーランド)への帰国支援にも取り組んでいます。 ウクライナ避難民が帰国する主な理由は、大きく2つに集約される印象です。1つ目は、ウクライナに残る家族と再会するのを目的とした「家族」の問題。2つ目は、母国における教育のために帰国を選ぶ「教育」の問題で、今回お話を聞いたハンナさんは正に後者に当てはまります。 他方、日本に残ることを決めた避難民は若い方が多くもともと日本文化に興味・関心があった方や、また日本に親類縁者がいる、といった方が定住を希望するケースが目立ちます。 ――日本財団では避難民に向けた日本語奨学金制度を設立し、就職を目指す避難民の日本語学校の学費を負担するなど、定住に向けた新たなサポートも実施してきました。支援に関する今後の課題はどこにあるのでしょうか? 神谷:子どもの教育支援、日本語教育を含む就業支援は引き続き取り組んでいくべき課題です。特に就業支援については、高い専門性やスキルを持った人材が多数存在するにも関わらず、“言葉の壁” の問題が立ちはだかり、なかなかマッチングが進みません。 彼らの経歴や将来性を考慮すると非常に高いポテンシャルを秘めていますので、労働力の確保という短期的な視点だけでなく、ぜひ中長期的な視点で避難民の雇用・育成を検討する企業が増えてくれたら、と願います。